美容師さん ページ4
グルちゃんが帰って、お花を飾る。本当にきれいだな…。
また一人になって寂しい部屋を見渡す。
『…昔は騒がしかったのになぁ…。』
お母さんはキッチンでお菓子を作っていて、お父さんは大きな荷物を抱えて玄関から現れる。私とグルちゃんはリビングで一緒に遊んでいる。そんな毎日だった。でもお母さんとお父さんが居なくなってから、グルちゃんがお城の方で働くと言われてから、この家から騒がしさが消えた。賑やかだったあの日から、私は、独りぼっちだ。
『…寂しいなぁ。』
手を伸ばすも前にあるものには届かない。寂しさは、埋まらない。
せっかく自分のめでたい日なのだ。胸の下まで伸びた髪の毛を切ってもらおうかな。もう夏だし。ついでに祝ってもらおう。そう思い、赤いカーディガンを着て家を出た。
町の中心部までは40分くらいで着く。
『こんにちは。』
美容室のドアを開けるとカランカランと心地よい音が出迎えてくれる。
eml「来た来た。いらっしゃい。」
この店の店主はエーミール。本と蝶を愛している独り身の男性だ。昔からお兄ちゃん的存在で、よくグルちゃんと遊んでもらった。懐かしいなぁ。
eml「カットでええですか？」
『可愛くして頂戴？』
eml「ふははっ、はいはい。」
目を開けて鏡に写る自分をみて驚いた。
『か、可愛い…。』
eml「まぁ、素材がええからな。」
『…。』
eml「A？」
『ううん。私、お母さん似だなって。』
eml「おん、綺麗な顔してる。」
『ふふっ。』
笑い返してくれるエミさん。
eml「せや。」
そういって持ってきたのは大きな袋。
『なに？これ。』
eml「誕生日。おめでとう。また一つ大人になったな。」
憶えててくれたのか。大きな袋を開ける。
『オ、オオカミ…？』
eml「犬や！！」
店内にエミさんの声が響く。
『…うるさい。』
eml「うっ、犬です。」
『ん〜〜〜でも私オオカミのほうが好きだからオオカミでいいや。』
eml「まぁええけど…。」
『ふふっ。』
今年は良い誕生日だ。ふわふわとした犬のぬいぐるみ。でもオオカミにしか見えない。それでもいい。忘れられることが一番嫌だから。
『大事にするね。』
eml「そろそろ暗くなるから帰り、送られへんくてすまんなぁ。」
『ううん。大丈夫、ありがとう。今度はエミさんが私の家に来てね。グルちゃんも呼んで。』
eml「そやな。」
もう一度カランカランと鳴らして出る。お腹空いた…。オレンジ色の綺麗な夕焼けが私を照らした。
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ゆい - この、物語をつくっていただき、ありがとうございます。この一言に尽きます。 (2020年7月27日 22時) (
レス) id: 63830571c3 (このIDを非表示/違反報告)
や〜神(プロフ) - まじで泣いた。素敵な作品ありがとうごさいました。 (2019年5月13日 12時) (レス) id: 73f7a8851f (このIDを非表示/違反報告)
眠猫(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます！！感想を頂いて、久しぶりにこちらも見返して、時が経つのは早いなと実感しました…。連載中の物もありますのでよろしければそちらもどうぞ！！ (2018年12月23日 19時) (レス) id: 6df2bbbd20 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 作者さん何でこんなに泣かしてくれるんですか本当に感動しました。ありがとうございます (2018年12月23日 13時) (レス) id: 41f91518d5 (このIDを非表示/違反報告)
猫うどん(プロフ) - 眠猫さん» ありがとうございます！！もちろんです！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: b69debf442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2018年4月30日 16時
