されど幼馴染 ページ29
現実は、物語の中ほどうまくはいかない。私を囲む町の人たちは、冷たい眼差しで「出ていけ」そう言ってるように感じた。所詮こんなもんか。確かに掟を破った私が悪い、いやめちゃくちゃ極悪人だ。けれどそれが嫌なんだ。掟なんてもんに縛られて生きていいのだろうか。言い訳に聞こえるかもしれない。けど、けどこんなの間違ってる。掟を作ってまで狼を警戒するのだろうか。だって
「出ていきなさいよ、出て行ってよ！！」
私に浴びせられた罵声は、あの日、グルちゃんに言ったものと同じだった。強い言い方でただ叫んでいる。こんな傷つくんだ。誰かに否定されるのって。
『違う、私はただっ、』
痛い。ひどく冷静だった。頬に手を当てると赤い血痕がべたりと付いた。
ht「掟は掟だよ。いくら君だからと言って掟を破る人はこの町には要らない。」
『そんなっ、掟に縛られて悔しくないんですか！？狼だって悪い人じゃない、皆さんが知らないだけで、知ればきっと、』
ht「関係ないんだよ！！俺の先祖は狼に襲われて亡くなった。この町はそんな人がたくさんいる。そんな凶暴な狼から守るために掟が作られた。なのに、君はどうして破るの？知らないのは君の方じゃないか、ちゃんと、この町を知らないでしょ？？」
何かが割れた音がした。そうだ、私は自分のことばかり考えて、何も、何も…。悔しい。こんな自分が。
ht「出て行ってよ、もうやめてよ。」
『…、ご、ごめん…なさい…。』
みんな、私を見て嘲笑っていた。赤ずきんが居なくなって清々したとか、平和が訪れたとか。別にゾムさんを責めるつもりはないし、町に行かなくなるだけ。ただ、それだけ――――――
「満足か？」
低い声がきこえた。顔を上げると眉間に皺を寄せた彼、グルッペン。
『―――っ、グルちゃん…？』
gr「こいつが本当に狼と居たとしても、この町に通った、笑顔を振りまいてくれた。町はずれに住んでいても大切なこの町の住人なんだろう？それを“掟”のために否定するのか？偉くなったもんだ人は。こいつがどこで誰と会っていようがAはAなんだ。否定する必要なんて全くない。」
おいで。そう言われて座り込んだ私の膝と背中に手を回しそっと抱き上げる。
『なんで、私っ、グルちゃんに――、』
gr「泣くなやこんくらいで…。帰るで？」
人ごみを掻き分けて家路に向かう。グルちゃん、こんなに温かいんだ。ごめんなさい、たくさん酷いことを言ってしまって、ごめんなさい。
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ゆい - この、物語をつくっていただき、ありがとうございます。この一言に尽きます。 (2020年7月27日 22時) (
レス) id: 63830571c3 (このIDを非表示/違反報告)
や〜神(プロフ) - まじで泣いた。素敵な作品ありがとうごさいました。 (2019年5月13日 12時) (レス) id: 73f7a8851f (このIDを非表示/違反報告)
眠猫(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます！！感想を頂いて、久しぶりにこちらも見返して、時が経つのは早いなと実感しました…。連載中の物もありますのでよろしければそちらもどうぞ！！ (2018年12月23日 19時) (レス) id: 6df2bbbd20 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 作者さん何でこんなに泣かしてくれるんですか本当に感動しました。ありがとうございます (2018年12月23日 13時) (レス) id: 41f91518d5 (このIDを非表示/違反報告)
猫うどん(プロフ) - 眠猫さん» ありがとうございます！！もちろんです！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: b69debf442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2018年4月30日 16時
