姿 ページ16
鈍い音と共にゾムさんの姿が消える。
『…え』
tn「はぁー、俺はトントン。この森で医者をやってる。けがは？」
『ない、です。』
ゾムさんの腕を肩にかけ、私に手を差し伸べてくれた。
tn「まったく、言われたやろ？森には入ったらあかんて、掟があるんやで？」
『いや、だって…ゾムさんが。』
ゾムさんの名前を上げれば顔を大きく歪めた。
tn「まさか…余計めんどくさいなぁ。」
どうやら私の存在は認知されている、ということでいいのだろうか。
『なるほど…。』
御伽話と同じ、ゾムさんは満月の夜に自我を保てなくなるらしい。そのことを中々私に言い出せず、トントンさんに相談していたらしい。
tn「大切にされてるんやで。」
赤いマフラーで口元を隠しながら笑うトントンさん。
『でも…さっきだって…。』
よみがえる記憶。確かに私はあの大きな爪で…。
tn「大丈夫や、ゾムに限ってそんな奴やない。」
そっと、ゾムさんが寝ているベッドを見る。
tn「大切にしたって、ゾムのこと。」
なぜだろう、心が温かい。
満月は好きだ。けど狼を変えてしまう満月は嫌いだ。
椅子に座ってベッドに寝ているゾムさんの髪をかきわける。さらさらと指の間を通り抜けていく茶髪。ねぇ、ゾムさんは私を食べようとしたんですか？
ゾムさんの胸に耳を当てる。起きないようにそっと。
人の心臓の音を聞くと、寂しくなる。
私の頭に乗る大きな手。優しく撫でられる。寝相で人の頭を撫でるって…。どんな人だ、いや、狼か。ぎゅっと緑のパーカーを握りしめて頭をぐりぐりしてやる。明日は元に戻ってるといいな。
「―――きろ、A。」
聞きなれてしまった声で目が覚める。
『…ん。』
zm「重たいっちゅうねん！！」
頭をバシバシと叩く狼。ぼーりょくはんたーい。
zm「おはよう。昨日はすまんな。」
突然始まる謝罪。私はそれよりも、
『昨日ゾムさんを助けたのは誰と誰ですか？』
zm「…トントンとA？」
『と、言うことは？』
zm「…ありがと。」
その言葉が欲しかった。
トントンさんはとってもいい腕のお医者さんだ。一応私も薬草関連の仕事をしている。市場の薬屋に薬草を提供してるくらいだけれど。
だから医療関係で盛り上がっていたのだけれど、
zm「なぁA、かまってぇや。」
頭に乗る重み。トントンさんは苦笑いをしている。同情するなら金をくれ。
『お、重い。』
zm「今日の夕飯何？」
『あっ、来るんですね。』
こういうのも、悪くない。
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ゆい - この、物語をつくっていただき、ありがとうございます。この一言に尽きます。 (2020年7月27日 22時) (
レス) id: 63830571c3 (このIDを非表示/違反報告)
や〜神(プロフ) - まじで泣いた。素敵な作品ありがとうごさいました。 (2019年5月13日 12時) (レス) id: 73f7a8851f (このIDを非表示/違反報告)
眠猫(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます！！感想を頂いて、久しぶりにこちらも見返して、時が経つのは早いなと実感しました…。連載中の物もありますのでよろしければそちらもどうぞ！！ (2018年12月23日 19時) (レス) id: 6df2bbbd20 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 作者さん何でこんなに泣かしてくれるんですか本当に感動しました。ありがとうございます (2018年12月23日 13時) (レス) id: 41f91518d5 (このIDを非表示/違反報告)
猫うどん(プロフ) - 眠猫さん» ありがとうございます！！もちろんです！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: b69debf442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2018年4月30日 16時
