赤い王子様 ページ5
『ねぇ、さっきまであんなに曇ってたのに今はすごい晴れてる』
「不思議の国やからなんでもありっすよ。でもずっと雨が続いてたんで、久々の晴れは気持ちいいっすね」
『ずっと雨！？』
「アリスが帰ってから、ずっと」
ぬかるんだ地面を歩き続ける。私が帰ってから、ずっと？
『ねぇ、私はアリスじゃないのよ』
「いや、アリスですよ」
『だから、』
「じゃぁ、本当の名前は？」
『え？』
生まれてすぐ、両親につけられた名前。初めて鉛筆を持って書いた時も、高校試験の願書でも資格を取るときも、会社の契約書だって。何度も書いて、呼んで、呼ばれて、書かれてきた私の名前。
・
思い、出せない。
「ほら、君はアリスやん」
私は、アリスじゃ、ないのに。
・
・
・
「あれ、あそこがチーノのいる赤の王子のお城っすね」
空にぼんやりと浮かぶお城の影。見るからに大きそうだがそれでもうっすらと遠くにしか見えないということは、相当遠いということだろう。
「チーノは今赤の王子のお城で働いてる筈です。でもここで問題が起きてるんすよ」
『問題？』
「赤の王子は意味の無い書類整理が好きなんですよ。毎日作成される書類には、この不思議の国で起きた出来事が事細かに書かれてます。その書類を、王子が一人で仕訳けていくんですよ」
『仕訳けるって、』
「王子の持つ粛清剣で粛清すべきかどうか」
赤と言われて連想するのは何だろう。この時、私は間違いなく、"血の赤"と答えるだろう。
「きっと早くても明日には、アリスについての書類が作成されます」
『私の、書類、』
「王子はアリスが大好きです。でも、好きだからこそ、」
嫌な予感がする。やめてくれ、これ以上言葉を綴らないでくれ。
「アリスを、粛清します」
残業でも、なんでもするからさ。
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@眠猫。(プロフ) - 戯於さん» 私には勿体ないお言葉ばかりで…。ありがとうございます！ 目まぐるしく変わっていく展開ですが、隅々まで読んでいただき光栄です。少しでも長く、貴方の中にこの作品が残りますように！ (2022年8月7日 18時) (
レス) @page48 id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
戯於 - わぁあ…文に才能がありすぎます、ガチめに泣きました…。世界線の変え方とかhappy endじゃなかったときの絶望感とかの書き方が…もう…めっちゃ凄いです。ラストが凄い好きでした。多分一番好き。もう…最高の物語をありがとうございます…！ (2022年8月7日 10時) (レス) @page47 id: 197ff74d89 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - チーズ.さん» ありがとうございます！私には勿体ない言葉です…。展開を意識しすぎて文章はお粗末になってしまったかもしれませんが、大変嬉しいです。ありがとうございます！！ (2021年8月17日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
チーズ.(プロフ) - 普通にこういう方達やなくても色んなジャンルの小説書いて欲しいレベルで凄いですね！！まさかこうなるのかと圧倒されました！いやぁ、凄ぇ…… (2021年8月16日 7時) (レス) id: 994e308db6 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - パソコンの精さん» ありがとうございます！いいえ！とっても伝わりましたっ！！原作の方もとってもかけがえのない、大切な物語です。私の心の中にもいつもあります。それをパソコンの精さんにも知っていただきとても嬉しいです！新作の方もよろしくお願いします！！ (2021年8月12日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2021年5月3日 18時
