タルト・タタンは二十歳になる前に ページ11
「取り合えず、俺がトントンの様子探ってくるから、その間にシッマに会いに行ったらええんちゃう？」
「マンちゃん天才やん！」
帽子を一つずつ箱に入れ始めるマンちゃんに拍手を送り、私はティーカップを洗っていく。隣に立ち、洗った食器を拭いてくれているショッピ君にふと疑問を投げる。
『…ずっとあそこで寝ている男の子って、』
「あぁ、眠りネズミのロボロさん。一応アリスより年寄りやで」
『え"』
ぐーすかぴーすか、ゾムが騒いでいるのに起きる様子はない。顔に掛けられている紙のせいで顔は見えないが、気持ちよさそうに熟睡しているのはわかる。
「身長のせいで小さい子に見えますけど、立派な成人男性ですよ」
『へ、へー』
寝る子は育つなんて、あれはやっぱり遺伝子だろう。
・・
「アリス、ちょっとおいで？」
マンちゃんが家を出る直前、玄関に呼ばれ彼の前に立つ。
「オーブンの中にタルト・タタンが入っとる。旅の途中にでも食べてな？」
『マンちゃんありがとう！』
お茶会に出されていたスイーツは全てマンちゃんが作ったり、特別に取り寄せたりしているもの。パリで出されていても問題ないくらい、おしゃれで美味しくて、まさしく幸せになれるもの。
「シッマは甘いもの苦手やからコーヒー豆でも持って行ってあげて」
『うん。…ねぇマンちゃん、』
扉が開かれ、眩しい陽がマンちゃんを照らした。本当に、今言うべきことではなかったかもしれない。けれど、昨日のお茶会から気になっていたことだ。
『どうして、タルト・タタンは不思議なの？』
子供みたいな私の質問に、マンちゃんはくすりと笑って、
「タルト・タタンは焼きあがったものをひっくり返してみんなの前に出すんやで？」
私の頭を優しく撫でた。
「…不思議の国にぴったりやと思わん？」
『…う、うーん、』
「ふはっ、アリスにはまだ難しかっためう」
マンちゃんに説明されても、タルト・タタンを作ったことがない。首を傾げる私に笑みが止まらないマンちゃん。それと同時になんでこんな子供染みたことを質問してしまったのだろうかと恥ずかしさも覚えてきた。
「アリス、大人になると大事なものを失ってしまう。大人になりすぎてしまうのも、あかんで？」
その答えも、少しわからなかった。
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@眠猫。(プロフ) - 戯於さん» 私には勿体ないお言葉ばかりで…。ありがとうございます！ 目まぐるしく変わっていく展開ですが、隅々まで読んでいただき光栄です。少しでも長く、貴方の中にこの作品が残りますように！ (2022年8月7日 18時) (
レス) @page48 id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
戯於 - わぁあ…文に才能がありすぎます、ガチめに泣きました…。世界線の変え方とかhappy endじゃなかったときの絶望感とかの書き方が…もう…めっちゃ凄いです。ラストが凄い好きでした。多分一番好き。もう…最高の物語をありがとうございます…！ (2022年8月7日 10時) (レス) @page47 id: 197ff74d89 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - チーズ.さん» ありがとうございます！私には勿体ない言葉です…。展開を意識しすぎて文章はお粗末になってしまったかもしれませんが、大変嬉しいです。ありがとうございます！！ (2021年8月17日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
チーズ.(プロフ) - 普通にこういう方達やなくても色んなジャンルの小説書いて欲しいレベルで凄いですね！！まさかこうなるのかと圧倒されました！いやぁ、凄ぇ…… (2021年8月16日 7時) (レス) id: 994e308db6 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - パソコンの精さん» ありがとうございます！いいえ！とっても伝わりましたっ！！原作の方もとってもかけがえのない、大切な物語です。私の心の中にもいつもあります。それをパソコンの精さんにも知っていただきとても嬉しいです！新作の方もよろしくお願いします！！ (2021年8月12日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2021年5月3日 18時
