白ウサギは急いでいる ページ1
カチカチと響く秒針がうざったい。
『…喋った、』
「ウサギやって喋るやろ？」
人から浴びせられる期待、眼差し、評価。それらから逃げ出すように地元へ帰ってきた。緑ばかりの田舎にある実家へ突然帰ってきて、昔ながらの風呂場でシャワーを浴びながら号泣した。
人は私を努力家と言う。
けど、テストでいい点を取るために泣きながら勉強したし、資格を取るために死ぬほど勉強した。そうして入った会社でも、新人だから。真面目な子だから。若いんだから。と理由を付けれるだけ付けて、がむしゃらに働かされた。
「とりあえず早く行くで！時間ないんやから…」
『ちょ、ちょっと待って、』
勉強をしなくてもいいならとっくに放り出した。私は真面目じゃないし、定時には帰りたい。人を勝手に真面目だからとか決めつけるな。
私の努力も知らないで、努力家と勝手に言うな。
「俺が怒られるねんて！！」
『だからって、私の知ってるウサギは話さないし、二足歩行で歩かない。懐中時計も、サスペンダーのついたパンツも履かない…』
「えぇ？」
『それに、』
そうしてストレスを発散した次の日。実家の広大な庭に生えている一本の木に背中を預け、本を読む。そして忙しなく地面が蹴られた。
・
・
『―――そ、それに、急に人間なんかに変身しない、！』
「…変な子やなぁ」
真っ白なウサギ。
私をじっと見つめ、野ウサギかと思って手を伸ばす。けど、毛並みが綺麗すぎる。首元におしゃれな革ひもが付いている。もしかして、飼いウサギなのか。
膝を折っていたウサギは二足歩行へ立ち上がり、きちんと足を分かれさせて、私の前へ近づいてくる。そして、喋った。冒頭へ戻る。
「行くで、アリス！」
瞬きをしたほんの一瞬。目の前にいた白ウサギは私よりも幾分も高い青年へと変化していた。
・
そしてそんな青年に、抱えられてしまった。
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@眠猫。(プロフ) - 戯於さん» 私には勿体ないお言葉ばかりで…。ありがとうございます！ 目まぐるしく変わっていく展開ですが、隅々まで読んでいただき光栄です。少しでも長く、貴方の中にこの作品が残りますように！ (2022年8月7日 18時) (
レス) @page48 id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
戯於 - わぁあ…文に才能がありすぎます、ガチめに泣きました…。世界線の変え方とかhappy endじゃなかったときの絶望感とかの書き方が…もう…めっちゃ凄いです。ラストが凄い好きでした。多分一番好き。もう…最高の物語をありがとうございます…！ (2022年8月7日 10時) (レス) @page47 id: 197ff74d89 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - チーズ.さん» ありがとうございます！私には勿体ない言葉です…。展開を意識しすぎて文章はお粗末になってしまったかもしれませんが、大変嬉しいです。ありがとうございます！！ (2021年8月17日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
チーズ.(プロフ) - 普通にこういう方達やなくても色んなジャンルの小説書いて欲しいレベルで凄いですね！！まさかこうなるのかと圧倒されました！いやぁ、凄ぇ…… (2021年8月16日 7時) (レス) id: 994e308db6 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - パソコンの精さん» ありがとうございます！いいえ！とっても伝わりましたっ！！原作の方もとってもかけがえのない、大切な物語です。私の心の中にもいつもあります。それをパソコンの精さんにも知っていただきとても嬉しいです！新作の方もよろしくお願いします！！ (2021年8月12日 22時) (レス) id: f602ea559e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2021年5月3日 18時
