その娘、怪盗につき。

あるいは、革命の暁。3 ページ35

「お待たせしました、こちらへどうぞ」



店員が壁を押すとカラフルな壁が回転扉のように開き、奥が見えた。次元について歩いて行くと店の奥の空間は意外と広く、アイスクリーム屋の店内とは全く別物だった。シックで明かりも少ない部屋にはカウンターテーブルとあまり大人数では座れないソファ席がいくつかあった。彼に習って隣に座ると目の前の照明が着いて左右からせり出してきた棚には幾つもの酒が並んでいた。



「いつものをくれ」



「相変わらずだね、お客さん」



先程の店員が注文を受けて棚からバーボンのボトルを取り出した。



「あの、そろそろ説明をお願いできる？」



店に入ってから今ここに座るまでが驚きの連続で彼女にはきちんとした説明が必要であった。



「ここはな、この国で数少ない酒を飲める場所だ」



「？」



「着いた時に説明したとは思うがこの国がクーデターを起こそうとしている理由の中に隣国が勝手につくった法律、禁酒法ってのがある
つまり酒を飲んだり、売ったり買ったりすると犯罪になる面倒な法律だ」



「ええ…」



「昔のアメリカと一緒でな、禁酒法なんてものが出れば当然流行るのはこういう隠れ家的酒場のスピークイージー、それに幅を利かせてくるのがマフィアやギャング共だ」



そうなると自然に街の治安は悪くなる…が同時に次元のような雇われた傭兵や殺し屋の仕事も増える。グラスの液体を一気に呷る彼。



「またお昼からそうやってー」



「こればっかりは俺が悪いんじゃねえ、昼間っから開いてる店が悪いんだ」



「どっかで聞いたことある言い訳」



ムッとする彼女の前で苦笑いをしている店員、兼マスターはそんなAにアイスクリームの浮かんだカクテルを差し出した。

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