その娘、怪盗につき。

復讐には復讐を。2 ページ18

「いつものお願いします」




ところ変わって白壁の街中にあるカフェ。
彼女はテラス席の端に座って頼んだ料理が来るのを待っていた。




「お待たせしましたー、あら今日はお父様と一緒ではないんですね？」



「あー、父は今日仕事で…」



「お忙しいんですね、お父様」



「ええ、まぁ…あはは」



以前、次元と一緒にここに来たことがあった。
注文を聞いていた店員が次元に対して「お父様はどうなされますか？」と言ったのだ。
それ以来ここではごく普通の親子として振る舞うことにしている。お父様、と言われた次元の反応は想像に難しくないがなんとか誤魔化した。あの時の顔は彼女の側からしか見えてない。しかし、Aは思い出して笑ってしまいそうになった。帰りに「お父さん」と呼んで怒られたこともだ。




「また連れてきますね」




「是非、お待ちしております」




Aは厨房に戻る店員を笑顔で見送ったが自分がぎこちない笑い方になっていないか心配になった。
運ばれてきた皿にはこんがり焼けたトーストにベーコン、卵、トマト、レタス、が挟んであるものやコールスローにハニーマスタードソースを合わせてサンドしているものなどがあった。彼女は"いつもの"と注文するが、このクラブハウスサンドは具が日替わりで季節によっても多少変化があるらしい。具の内容が同じものに当たった日は少ない。




「いただきます」




幼い頃から食べる時には誰か一緒でなくともいただきますと言う癖がついていた。誰から教わった訳でもないが五ェ門が「良い習慣だ」と言っていたのでこれからも続けようと思ったのだ。そんなことを考えながらクラブハウスサンドを口に運んだ。





「ん…？」




なにか硬いものが歯に当たった。




「これは………弾？」




ガレット・デ・ロワを頼んだ訳では無いし、そういうサービスを始めたという話も聞かなかった。
不審に思って銃弾を少し触ってみると、弾頭が外れて中から細長く丸められた紙が出てきた。




「…！？」




そこには



「今すぐ町外れの教会まで来い 仲間に知らせると捕らえている次元大介の命は無い」



と赤い字で書かれていた。

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