その娘、怪盗につき。

黒猫は半宵に鳴く。 ページ13

「あー散々だったぜー」



昨夜、嵐と共にやってきたルパンは連れ立ってきた女性に逃げられたらしい。肩を落としてため息をつく横顔に赤い手型が。



「大丈夫、つぎいってみよーつぎ！」




「おー頑張れよ、応援してるぜー」




Aはコーヒーを入れていて、次元は新聞を読んでいる。2人ともルパンにはさほど興味が無いらしく適当な返事がかえってきた。




「お前らなぁ」




少しムッとしながらルパンは次元と同じテーブルについた。




「はい、私の分あげる コーヒーでも飲んで忘れよ？」




「Aちゃん…」




机に伏したルパンは顔だけAの方を向く。
彼の目はかなり潤んでいた。相当ショックだったらしい。
少しだけ、例えるならば今スプーンですくった砂糖くらい可哀想かもしれないと思った。




「そう言えば不二子さんと連絡がとれたんだけど、今日ここに寄るって…元気出た？」




「不二子ちゃんが！？元気元気ー俺様復活よー！！」




「よかった」




彼女からするとスプーン1杯の慈悲だったが、ルパンにはコーヒーカップから溢れ出るくらいの優しさだったらしい。




「あんまり甘やかすなよ」




新聞からこちらに興味が移った次元が口を開いた。
いつもろくな事がねえんだからな、と吐き捨てるように言う。渋い顔をしているのはコーヒーのせいではない。

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