君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ6)

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「あ、おはよ轟」
「おはよ」

いつも通りの日常が始まった
…否、1つ違うこと
それは私と轟が「偽」恋人関係になった事だ
心無しかいつもより轟が私に話しかけてくるし近くにいる

いつも話しかけてくるんだけど今日は…ヤオモモと響香と居る時も話しかけてくる
いつもはこんな事しないのに…やっぱ意識してんのかな

「ねぇ、今日轟とAの距離近くない？ヤオモモもそう思うでしょ？」
「そうですわね…何だか轟さんにAさんを取られてしまったみたいですわ」

そう怒ったような表情をするヤオモモが本当に可愛かった

「大丈夫だよヤオモモー！私ヤオモモの事大好きだから！響香も大好きっ！」

2人まとめて抱きしめる

「Aさん…！」
「うん、ウチもAの事好き」

2人とも背中に手を回してくれた
…本当に好き

「あー耳郎と八百万だけずーるいー！電気もぎゅってしてー」
「え、絶対やだ」
「やだAちゃん辛辣ぅ」

急に出てきた上鳴をチョップしてまた響香とヤオモモを抱き締めた

「…翡翠、俺もして」

「…ん？」
昨日散々聞いた声が聴こえた
…いや、幻聴かな
だって声の主はさっき緑谷と話してたし…

「轟？！！」

上鳴があほ面になりながら叫んだ
私はゆっくり後ろを向いた

「3人だけ、ずりぃよ」

そこには少し頬をふくらませた轟がいた

「なっなっ…え？」

「A喋れてないよ」
ツッコミながらも困惑している2人にまた抱き着く

「俺にはしてくれねぇの？俺の事好きじゃないの？」

まるで小さい子が言うように轟は首を傾げた

「…ふぇっ」

ずい、と轟のお綺麗な顔が私の目の前に近づいた
顔が赤くなるのが分かった

「とっ…轟くん…？」

ほら、緑谷も困ってるよ轟くん

「ねぇ翡翠…？」

轟の手が私の頬に触れた
周りから歓声が聴こえる

「轟…？おかしいよ」

「何がおかしいんだ？彼女の事大事にするのは当たり前だろ？」

今度は本当に大きな歓声が聴こえた

「俺の事、どう思ってるんだっけ？」

私は今轟が何を考えているのか分からなかった
ただその綺麗な瞳に見蕩れていた

「ほら、早く答えて」

その目には「好きって言え」って書いてあるような気がした

「好き、です」

「ん、よく言えました」

そして私の頭を優しく撫でた

「…っつー事だから」

誰に向けたかは分からないけど轟は確かにそう言った

このあと私が質問攻めにあった事は言うまでもないだろう。
大変だったとだけ言っておく