君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ48)

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「っ…はぁぁ…」

目の前で大きなため息をつかれるとなんだか気分が滅入ってしまう
ため息の犯人である轟くんは携帯片手にどんよりとした表情をしている

「…どうしたの」

何がともあれこんなにも彼が落ち込むのは珍しい
僕が聞くとまたため息を着いた轟くん

「昨日の夜送ったメッセージ、既読ついてんのに返信こねぇ」
「翡翠さんの事だよね、珍しいね」

よく聞かなくても翡翠さん絡みだと分かるようになった僕は相当苦労したとだけ言っておく
毎日惚気話を聞かされる僕の身にもなって欲しいと何回思った事か

「昨日のデートの帰り道、キスしちまった」

「…はい？？」

キス？鱚？きす…

「え？君ら…え？」

まじのカップルだっけ？違うよね？

「本当にやっちまった…嫌われた…もうダメだ…俺本当に馬鹿だ…」

轟くんの反応を見るに2人はまだ偽カップルなんだろう
こんな取り乱す轟くんは初めて見た

「…嫌われた証拠ってそれだけなの？」

そう言うと彼は力なく頷いた
なんだか拷問か何かをしている気になってしまう

「…一つだけならまだ希望はあるんじゃないかな？」

僕は精一杯笑ってから席を立った

「え、おい」

「僕、翡翠さんの所行ってくるね！先にお昼ご飯食べてていいよ！」

「緑谷…！？」

困惑する轟くんを置いて僕は込み合った食堂を急ぎ足で進んでいった

＿＿「いたぁ！翡翠さん！あっ麗日さん、翡翠さん少し借りていい？」

暫く歩けば麗日さんと翡翠さんを見つけた

「へっ？！ううん、ええよ…？」
「ごめんね、翡翠さんも！すぐ終わるから」
「…うん」

轟くんと同じように力なく翡翠さんは頷いた

・

「…焦凍の事でしょ」

人気のない廊下で翡翠さんは全てを見透かしたように笑った

「うん…翡翠さんはさ轟くんのことどう思ってる？」
「…緑谷に言えたら私、こんなに苦労してないと思うんだけどな」

そう言って皮肉っぽく笑う
そんな所も絵になっていてさすが女優の娘さんだと今の状況と全く関係ないがそう思った

「僕もそう思ってたよ
だけどさ、轟くんみたいに本当に大切で、関係が崩れるのが怖いような人より
まぁ…言い方悪くなるけど多少崩れたって問題のないような友達に話す方が気が楽じゃない？」

そう言うと翡翠さんはかすかに目を見開く
その発想はなかったと言わんばかりの表情だった

「そう、かもね…じゃあ聞いてもらおうかな

私がなんで焦凍に気持ちを話せないのか」

翡翠さんは悲しげに微笑んでから話し始めた＿