君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ46)

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「A、大丈夫？」

夕食後、ソファに座りボーッとしていた私に三奈が心配そうに近付いてきた
後ろには他の皆もいた

「…轟くんと何かあったん？」

お茶子が周りを見ながら言う

「何、か…あったけど…大したことじゃないから」

確かに私にとっては重大な事だけれど、皆からしたら普通だ
付き合っている同士がキスしたっておかしくない
でも、私達は付き合っていない

どういうつもりで焦凍は私にキスしたんだろう

疑問がぐるぐる頭を回って何も考えられなくなる
どうして、なんで…そんな言葉しか思い浮かばない頭

「…大丈夫だよ！ごめんね、変な顔して！」
「本当？喧嘩とかじゃないわよね？」
「うん！いつも通り！」
「ならいいけどさ…」

梅雨ちゃんも響香も私の精一杯の笑顔になんでもないという言葉を信じてくれたのだろうか、渋々と引き下がった

「…Aさん、よかったらこれお飲みください」

私の目の前のテーブルに置かれた小さなカップ
いい匂いと湯気が漂っていた

「この紅茶、心が安らぎますの。みなさんでお茶会でも致しませんか？」

ヤオモモの笑顔に肩の荷が降りたような感覚がした

「ありがとう…！ヤオモモ！」

「百ちゃん、私部屋に実家から送られてきたお菓子があるの。取ってくるわね」

「梅雨ちゃんさっすがぁ！ヤオモモもありがとー！」

一気にリビングは騒がしくなる
女子が私の周りに集まってきてお菓子を持ち寄って食べ始める

「Aと轟の初デートを記念しての女子会！」
「いぇーい！いっぱい食べよ！」
「話すんやないと？」

そんな会話が飛び交う部屋に少し笑いが零れた

「もう、皆…優しいなぁ」

色々な感情が込み上げてその一言しか言えなかった

「あ、やっとAちゃん笑ったね！」

透に言われ、初めて気付いた

「…無理には話さなくていいけど、本当に困ったら言ってね」

響香が照れ隠しなのか耳のプラグをいじりながら呟いた

「うん、ありがとう！！皆もね」

思わず両隣に座った響香とお茶子の肩を抱いた
2人とも嫌な顔せず笑ってくれた

「皆大好きだぁー！」

「私もAちゃん大好き！」
「それは皆一緒だよ」

明るい笑い声がいつの間にか女子しかいない寮の談話室に響いていた。