君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ44)

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義姉ちゃんとLINEを交換して寮に帰るべくドアに手をかける

「じゃあ冷さん、お姉ちゃん、また来ますね！」
「うん！楽しみにしてるね」
「また二人で来てね」

手を振って病室、病院を出る

「…なんか、冷さんとお姉ちゃんを騙すの少し心苦しいね」

ずっとその事を考えていた
冷さんをお義母さんと呼べる日は来ないしお姉ちゃんが本当の姉になる日も来ない

「…じゃあっ！」

急に焦凍が大声を出した

「どうしたの？」

「俺と、Aが…」

彼の綺麗なオッドアイが不安げに揺れた
夕焼けに照らされる綺麗な白と赤の柔らかい髪も揺れる
そんな彼に私は目を奪われ、何も言えなかった

「…A」

「……なぁに、焦凍」

焦凍はその先をなかなか話さなかった
話したくないのか、話せないのか
目を伏せて何かを考えているようだった

「焦凍…？」

名前を呼んで肩に手を置くと思いっきり顔を上げられる

鼻と鼻がくっつくぐらいの距離

「A…」

冷たい右手が私の頬にそっと添えられた
そしてゆっくりと頬を伝って顎に添えられる

綺麗な目が閉じられるのがまるでスローモーションのようにゆっくり見える
長い睫毛が揺れて、端正な顔が近付く

.

＿唇に柔らかいものが触れた。

.

「……え…？」

何が起こったのか、正しく理解出来ていない頭

きっと今の私は相当な間抜け面をしている事だろう

それは焦凍も同じようだった

自分がした事を理解していないような驚きに満ち溢れた顔

「…悪い」

小さく呟いて、焦凍は自身の指を私の指と絡めた

「……帰ろう、さすがに怒られちまう」

そう言った焦凍の横顔が夕日に照らされていてとても綺麗だった

そんなことを思ってしまうほど、私は今の状況が上手く理解出来ていなかったのだ

何だか気まづくて、帰り道は一言も言葉を発さないで寮へ辿り着いてしまった。