君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ42)

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「でも、焦凍も用事があるのかしら？」

冷さんが表情に少し影を落として言った
それに焦凍は慌てながら｢違ぇ｣と否定する

「本当に何でもねぇからAと母さんは気にせずに喋っててくれていい」
「…飯田に言われた事、気にしてんの？早く帰ってこいって」
「いや、それならもう連絡入れた。本当になんでもねぇよ」

そう言って慣れた手つきで私の頭を撫でた
その表情はまた強ばっていた

「…なら良いけどさ」

まだ多少のしこりは残る物のこれ以上言及してもただのしつこい女になるだけだし辞めた

「A、なんか喉乾かねぇか？俺少し買ってくるよ
せっかくだし2人きりで喋ったら？」
「え、焦凍？」

そういうなり焦凍は足早に外に出ていってしまった

「お金渡してないのに…」
「焦凍、どうしたのかしらね」
「さぁ…？」

冷さんと2人で首を傾げるも焦凍の行動の謎は解けるわけもない

「まぁまぁ、それよりAちゃん。私聞きたいことがあるの」

楽しそうに焦凍みたいに微笑む冷さん
｢なんですか？｣と和みながら言う

「焦凍のどこを好きになったの？」
「えっ…」

好きになったって…まだ好きにもなってない
まだっていうといつか好きになるみたいだけど
とりあえず恋愛的には好きじゃないし…

そうだ、焦凍のいい所を上げていこう
そうすればそれっぽく聞こえるはず

「焦凍は…初めて出会った時は本当に冷たい印象でした
だけど話していくうちに笑顔を見せてくれるようになって
その笑顔に惹かれてました

あと馬鹿な私に根気よく勉強教えてくれたり、付き合ってもないのに一緒に買い物行ってくれてたり、私が失敗して落ち込んでる時には不器用だけど支えてくれて…

本当に…大好きな彼氏です」

演技なのに照れてしまう
赤い顔を隠すように俯いた

「…そんなに焦凍の事を想ってくれてるのね」

綺麗な瞳はまた涙に濡れていた

「Aちゃんが娘になる日が待ち遠しいわ」
「そんな…こっちこそ｢お義母さん｣って呼べる日を楽しみにしてます！」

小さく笑った冷さんは私の頭を優しく撫でた
それがまるで焦凍みたいで｢やっぱり親子なんだな｣と実感した

「Aちゃん、焦凍と付き合ってくれて、私に会いに来てくれてありがとう

貴女はもう、私の娘も同然よ。いっぱい甘えたり話してくれて構わないわ」

「……はいっ！冷さん、こちらこそありがとうございます」

お義母さんと呼べる日は来ない
だけど今だけは

今だけは義親子(おやこ)で居させて下さい