君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ40)

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楽しい一日はあっという間に終わってしまう
もう時刻は4時
帰り道の時間と夕飯の時間を考えれば少し早いかもしれないが、我らが委員長飯田に｢なるべく早く帰ってこい｣と言われてしまっていたのでこの時間でいいのだと思う

名残惜しくショッピングモールを見つめてから焦凍の手を握って駅に歩き出した

「なんでそんな捨てられた仔犬みたいな顔してんだ」
「えっ私そんな顔してんの？」

焦凍は真面目な顔で私を見つめてそう言った
そんな顔していたっけと真顔に引きしめる

「いや…悲しいなって思って。まだ居たかったな」

そういえば焦凍の目が僅かに見開かれて揺れた

「何言ってんだよ、またいつでも来れるだろ？
来週でも来月でも来年でも…俺らにはまだ時間はたっぷりあるんだから」

｢な？｣と焦凍は余裕をもったような笑みを浮かべた
一方私は全然余裕のない顔をしているのだろう

来週ならまだ分かるけれど来月、来年
それまで焦凍は私と一緒にいてくれるという事なのだろうか

「そうだね…約束だよ？」

そんな顔を悟られないように笑顔を浮かべて焦凍の手をまた握る
それに呼応するように焦凍は小さく頷いた

「あと、まだ帰せねぇから」
「え？」
「俺、着いてきて欲しい所があるっつっただろ？そこに行くんだよ」
「今から？」
「あぁそう時間は取らせねぇから」

焦凍が私の手を引っ張って先に行く

「別に時間とかは気にしてないよ…そこってどこなの？」

「…秘密」

表情を変えず焦凍は駅への道を歩いていく
…大きく表情は変わっていないが何だか強ばっていたような気がした

＿＿＿＿
「A、ここだ」
「え…？病院…」

降りた駅から少し歩いた場所にあったのは大きな病院だった

「俺の母親が入院してる所だ」

焦凍の母親
その話は1年生の頃に軽くだが聞いた事があった
それでも｢俺の母親は入院している｣程度だった

「…母さんにお前を紹介したいんだが…大丈夫か？」

くるりと焦凍が振り返って言った
その表情はやっぱり緊張しているようだった

「…うん、もちろん」

私も何故か緊張してきた
偽とは言えど彼氏の母親に会うなんて
拒絶されたらどうしよう

その思いでいっぱいになり焦凍と話せずに階段を上る

焦凍は1つの病室の前で立ち止まった

「ここが母親の病室だ
…緊張しなくても大丈夫だ。優しい人だから」

そして全てを見透かしたように優しく微笑んだ

「…うん」

私は焦凍がドアを引く様子を緊張しながら眺めていた。