君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ31)

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イルカが先程のゆっくりした泳ぎとは違い、ハツラツとジャンプしたり動き回る
その度に水が溢れ出し、前列の客は楽しそうにビニール袋肩手に笑っている

そんな水の動きに惹かれてしまうのは、昔からの癖だ
こんな"個性"だからか昔から海やプールが好きだった
水泳で全国大会まで言ったのも少し自慢出来る事の1つ

「…綺麗」

魚が少し羨ましく思った
水がこんなにある場所で自由に息ができて泳げて

でも人間に産まれていなくちゃ、
焦凍や皆に出会えていないって事を考えると今のままでいいんだと思う

「やっぱり、水に惹かれるのか？"個性"的な意味で」

「うん、そうかもね。すごく好きなんだ」

目を離さずにそういう
水飛沫が上がり、太陽に反射してキラキラと光る
それがとても綺麗だった

「思いっきりこんな所で"個性"が使えたらな」

思わずそう声が漏れた

「…プロになったら出来るんじゃねぇの」

焦凍が楽しそうな声色で言った

「早くプロになりてぇな」
「…うん、そうだね」

一緒にプロヒーローになろうね
そんな意味も込めて、繋がれたままの右手を強く握りしめた

＿＿轟焦凍side

「…綺麗」

と呟く彼女の横顔が太陽の光に照らされて輝いていて見えた

お前の方が綺麗だろ、なんてクサイ言葉を言いそうになって目線を逸らした
彼女の目線の先には大きな水槽で自由に泳ぐイルカが居る

その熱っぽい視線をいつか俺に向けてくれたらいいのに
ありもしない夢物語を想像しては1人、哀しくなる

「すごく好きなんだ」

そう儚げに呟くA
＿好き
その一言にドキッとした

…いいな
俺もAに好きって言われたい

演技じゃなくて心の底から好きだって言われたい

演技じゃなくて心の底から好きだって伝えたい

「早くプロになりてぇな」

なんとなく、会話の流れで呟いた一言
Aは小さく｢そうだね｣と言ってから、俺の手を強く握りしめた

まるで｢一緒にプロヒーローになろうね｣って言っているみたいだった

そうだったら、どれだけ嬉しい事か

俺はAの手を優しく握り返した。