君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ4)

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「とぉどぉろーきぃー」

ご飯も食べてお風呂も入って轟の部屋のドアをガンガン叩く
迷惑だがいつもこうだ
宿題を教えてもらう時や遊びに来る時
いつも轟から誘ってくるのに寝ている時があるから
軋みもなくドアが開いた

「来たよ」
「ん、いらっしゃい」

すっかり見慣れた和室の中に入り畳に座る

「で？話ならなんでも聞くよ？」

私の隣に轟が座る
その間わずか20cm
少し動けば肩がぶつかる

「そうだな…俺さ、親父が勝手に決めた婚約者がいるらしい」
「こんっやく…」

漫画みたいだけど…轟の家ならありえるか
何しろNo.1ヒーローの息子だし

「ソイツ、顔も見た事ねぇし名前も聞いた事ねぇし…まずそんな奴と結婚できねぇだろ？」
「無理だね」
「しかも相手は乗り気だっつーし…てか顔知っても俺結婚しねぇし」
「…そりゃ轟程のイケメンと結婚出来るってなったら喜ぶな」

それだけは相手に同感する

「…したくねぇ…どうせするなら好きになった女と結婚してぇ」
「なるほどね…轟は今好きな人とかいるの？」
「……居ねぇ」
「だいぶ間があったよ轟さん」
「気の所為だ」

轟はわざとらしく私から目を逸らした
そして私の肩に体重を預けてきた

「とっ、轟…？！」
「さっきの手のお返し…俺は疲れてんだ
このままで話聞いてくれ」

轟の香りがいつも以上に近くなって心臓の音がうるさくなる
友達になんて気持ち抱いてるんだ私…

「ともかく、俺は結婚したくない
どうしたらいいと思う？」

「えぇ…うーん…あ！そうだ！」

急に大声を出した私にびっくりしたのか轟が肩を跳ね上げた
可愛いと不覚にも思った

「"偽彼女"作れば？？」

「偽……彼、女…？」

「そう！彼女を作ったフリをしてコイツが俺の彼女だから
「俺はコイツとしか結婚しねぇ！婚約させたきゃ俺らを引き離してみろ！」とか言ってさ」

全力の演技をして親指を立てる

＿この時、轟の顔が意地悪そうに笑った事をAは知らなかった

「それ、すげぇいい案じゃねぇか」

轟が笑ったのが顔を見ていなくてもハッキリわかった

「んじゃ、もうひとつ

お願い聞いてくれるか？」

「…？いいよ？」

この時の私は知る由もなかった
偽彼女なんて言葉を発言したことを後悔することになるなんて