君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ21)

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よく見ると、それは焦凍がよく着ている紺色の上着だった

「あ、これ…姉さんが勝手に持ってったのかと思ってたら…」

聞くと、焦凍が上着を脱いで椅子にかけて置いた所、帰る時には上着は消えていたらしい
だが父親と喧嘩し上着を探している場合ではなかったためそのまま帰ってきたらしい

「…あっ！焦凍ごめんね、強引にくっついたりして！」

ずっとくっついていたのに気付き慌てて離れる
…恥ずかしい

焦凍は驚いた顔をして私を見つめた
そして優しく微笑んだ

「何言ってんだよ。お前になら抱き締められたってご褒美にしかならねぇよ」

どくんっと心臓が鳴った
これは演技だって分かってるのにどうして…

「むしろもっとくっついてくれてもいいぞ」

腕を引っ張られ焦凍の胸にダイブする

「～っ！」

声にならない声が喉から飛び出した
皆の視線が突き刺さるし恥ずかしい

「皆悪いな、迷惑かけて」

「う、ううん。Aのこと悪く言う奴とか許せないし…」

響香が呆れた顔をして言う

「そうそう！2人には結婚してもらいたいもん！」

三奈が無邪気な笑顔を浮かべて言った
…え、私達が結婚…？

「きっ、気が早いよ三奈！」
「そう？あと２〜３年で結婚出来るよ？」

焦凍からも何か言ってよ、という意味で顔を見るが焦凍は手で顔を隠していたので表情は読め取れなかった

「…轟、少し話がある」

急に聞こえた低い声

「先生」

轟が慌てて先生に向き直った

「…何も事情を知らないで連れてきてしまってすまん
あと翡翠や皆も不快な気持ちになっただろ？悪かった」

「「先生…！！」」

その場にいた全員が予想してなかった先生の謝罪に声を揃える

「いや、大丈夫です…俺こそ元は轟家だけの問題なのに皆を巻き込んでしまって…」
「何言ってんだ！困った時こそお互い様だろ？」

申し訳なさそうにする焦凍に切島が明るい笑顔を向けた

「そうだよ轟くん！僕らも協力するよ！ね、皆！」

緑谷も皆の方を向いて言った
その問いかけに首を横に振る人は誰一人としていなかった

「緑谷、切島…皆…ありがとな」

焦凍が皆に向き合って笑った
皆に詳しい事情を話して(私達の偽関係は内緒)協力できる所はしてもらうらしい

その間にも、焦凍は私の側から離れなかった。