君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ3)

今日:21 hit、昨日:0 hit、合計:108,247 hit

002 ページ3

「…翡翠…？」

草陰に身を隠していたのだが呆気なくバレてしまった

「すいません、聞いてました」

腰を90度に折り曲げ精一杯謝る

「いやこっちこそこんな所で大声出して電話してたし、謝んな」
「うぅ…ごめんね」

轟の優しい微笑みに半ば浄化されながら立ち上がる

「まぁ…なんか、大変そうやね」
「あぁそうなんだよ…っんとに」

ため息を付いて頭をぐしゃぐしゃとかき乱す轟は色っぽい
…友達になんて感情抱いてるんだ、私
いつかバチ当たる

「んー、私で良かったら相談乗るし、元気だして」

意味のわからない励ましをしてガッツポーズをすると轟は「ふふっ」と軽く笑った

「じゃあ、晩飯食べ終わったら聞いてもらおうかな」

「…！いーよ、任せて」

轟につられ思わず笑った所で思い出した
…私がなぜ轟に会いに来たのかを

「そうっ！轟、もう皆いただきます済ませちゃってるよ！」
「あぁ、それで来てくれたのか。ありがと」
「ううん！てか完全に忘れてた！飯田に怒られるかなぁ」
「大丈夫、俺から言っとくよ」
「ありがとー」

歩きだした途端、少し間の開いた窓から声が聞こえてきた
この声の感じは絶対上鳴だ
なんて話してるんだろ

「翡翠と轟遅くねぇ？2人でイチャイチャしてんじゃねぇの？」
「やっぱあの二人付き合ってんかなぁ」

続いて瀬呂の声
私と轟が付き合ってる？

「…ないない」

こんなイケメンと付き合えるはずないでしょ
一緒に居られる事すら奇跡なのに
とにかくあらぬ勘違いで轟に不快な気持ちをさせる訳には行かない

「何がないんだ？」

ひょっこりと整った綺麗な顔が私の目の前に現れた

「えっ…あー何でもないよ！それより早く行かなきゃ冷めちゃう！」

私は轟の手を取った
その手はゴツゴツしてて大きくて色白くて冷たくて
やっぱり男の子なんだなって改めて思った

「翡翠…！？」
「今頃緑谷達が心配してるから早く行こっ！」

ぐい、と轟の手を引いて走り出した
なんで手を掴んだのかは分からないけど体が勝手に動いていた

「…おう」

そう小さく返事した轟の綺麗な横顔は少し微笑んでいた。

＿＿今、純粋に思えば私は付き合ってもいないイケメンと、手を繋ぐという重大な罪を犯した気がします。