君は彼氏だけど彼氏じゃない【轟焦凍】 (ページ19)

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「お腹いっぱいだぁ」
「A食べ過ぎなんだよ」
「美味しいんだもん」

ソファにだらしなく座って女子で固まり雑談をする
チラホラ私と轟の話も出たが上手く交していた

「おい、轟居るか？」

静かにドアが開いて、我らが担任の相澤先生が入ってきた
先生は急いでいるようだった

「焦凍なら今部屋ですよ」

私が立ち上がり先生を案内する
後ろから｢呼び捨て？！｣とか冷やかす声が聞こえた

「電話してみましょうか？」
「…頼む」

きっと先生も焦凍呼びに混乱していてのだろう
ワンテンポ遅れて頷いた

携帯を取り出して焦凍に電話をかける

『…A？』

意外にも焦凍はすぐに出た

「先生に呼ばれてる、今降りて来れる？」
『え？マジか。すぐ行くな』

「すぐ来るらしいです」
「そうか、ありがとな」

数分も経たず焦凍は緑谷と一緒にエレベーターから出てきた
一緒に勉強でもしてたのかな

「轟、お前に客だ」
「客…？親父なら拒否しますけど」
「エンデヴァーじゃない…入ってきていいですよ」

私もエンデヴァーかと思ってた
じゃあお姉さんかな…？

「焦凍さぁん！会いに来ちゃいましたぁ！」

ドアを乱暴に開けて入ってきたのはお姉さんでもお兄さんらしき人でもなかった

「…ひっ」

轟が小さく悲鳴を上げて私に近付いてきた
焦凍さん呼び…このぶりっ子っぽい感じ…

この子はきっと焦凍の婚約者だ
直感でそう思う

「し、焦凍…この人は…？」

焦凍を隠すように立って小声で言う

「俺はこんな女しらん」

そう言って身を翻してしまった
そう言いたくなる気持ちも分かる気がする

作ったような甘ったるい声
百みたいな綺麗な黒髪でも無く、かと言ってお茶子みたいに綺麗な茶髪でも無い
半端な髪色を高くツインテールにしてメイクは濃ゆくまるでお姫様のようにブリブリヒラヒラしたロリータファッション
…苦手なタイプだ

「焦凍さん？恥ずかしがってるんですかぁ？なら風花から言ってあげますよぉ仕方ないなぁ」

「帰れ。知らん。焦凍って呼ぶな」

まるで入学当初のガンギマリ轟くんのように女を睨む
久しぶりに見たな、初期ろきくん

「嫌だなぁ私達の仲じゃないですかぁ
私水無月風花でぇす

焦凍さんの婚約者です」

「「は……はああぁ？！！」」

A組の叫び声が寮に響いた

あ、これB組寮から苦情が来るな
面倒事に巻き込まれたと自覚した私はそんな事を考えていた。