君は彼氏だけど彼氏じゃない続【轟焦凍】 (ページ1)

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「私、中2の時に初めて彼氏が出来たんだ
しかも先輩でイケメンで優秀の…自慢の彼氏だった」

あまりにも翡翠さんが悲しげな表情を浮かべるから僕は聞くのが辛くなってくる
だがあぁ言ってしまった手前｢もう辞めていいよ｣なんて言えなかった

「…でも、中三になって当たり前だけどその彼氏は高校に進学して
雄英には及ばないけど、まぁまぁいい高校に入ってた
だから毎日不安だった。中2の時だって教室が違うだけでやきもきしてて…それなのに学校も違うようになって…だからある日、サプライズで彼氏の高校に行ったんだ」

翡翠さんは思い出すように目を細めた

＿＿Aside

「先輩、喜んでくれるかな」

彼氏の高校の門の前に私は立っていた
色々な人から注目を浴びるけれど先輩に会えるのなら別にどうでもよかった

「あははっ、でさぁ…」

昨日の夜、電話越しでも聞いた声
間違いなく先輩だ
聞き間違えるハズなんてない

「せんぱっ…っ？！」

彼の姿を見た私は何も言えなくなった
いや、正しく言えば彼の隣の人物を見てだ

彼の隣には女の人がいた
それも手を繋いで仲つむまじく歩いている

私は脳で処理できなくなり塀の横に身を隠す

「…昨日も電話かけてきたんだぜ？俺疲れてんのによォ…彼氏を少しは気遣えっての！」
「何それ笑早く別れなよ！で、私と付き合お？」
「早くそうしてぇけどなぁ…アイツ顔だけは誰よりも良いし、女優の娘だし…好きじゃねぇけど付き合っとく分には良いんだよ」
「じゃあ私は？」
「お前は浮気相手になるけど、好きなのはお前だけだよ」
「私もだーいすきっ！」

パニックになって泣いてしまった
先輩が浮気していたなんて…
好きなのは私だけだった

「じゃあ今日も家行っていい？」
「いいよ、お前ならな。彼女は最近断ってるけど」
「あは、最低だね」
「お前もなー」

私がお母さんの娘だから？
お母さんが凄い人だから？
私は見てくれていなかったの…？

一瞬、母親を恨みかけた
だけど親はどう頑張っても嫌いになれない

「せ、ん輩…」

私の横を通り過ぎようとした彼の表情は絶望に満ち溢れていた

「私の事…そんな風にしか思ってなかったんですね
…私は先輩の事がまだ好きなので…別れましょう
先輩が幸せならそれでいいので」

せめて最後まで、いい子を演じようと私は笑顔を取り繕った

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