大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ9)

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「…どういうつもり？」

2人分の足音が遠ざかり静寂に包まれた教室
轟は問いかけに答えず私の方をゆっくりと向いた

「…お前泡瀬の事好きなのか」

じっと見つめる轟の綺麗なオッドアイから逃れようと目を逸らす
「何でわかったの？」

「お前がさっき泣きそうだったから
あと泡瀬を見る目が俺らと違う…って緑谷が言ってた」

「…そうなんだ」
流石観察眼のある緑谷だなと現実逃避しかける

「あぁ。ま、振られちまったなお前」

表情を変えず言う轟に少し腹が立ち教室のゴミ箱を左手で掴んだ
「？」を浮かべる轟に右手を突き出した

「"個性"でゴミ箱とくっつけてやろうか」

「…？悪い」
絶対に分かっていないように轟は首を傾げる
「絶対思ってないでしょ」
さすがに冗談でしたのでゴミ箱から手を離し無理やり笑顔を作る

「…無理に笑うな」

轟の冷たい手が私の頬を触った

「辛い時は思いっきり泣けばいい
よく、頑張ったな」

轟の口角が僅かに上がり右手は私の頭の上に持っていかれる
そのまま優しく私の頭を撫でる轟の手も相まって私はボロボロと涙を零してしまった

「ぅ…ぁあ…」

だらしなく嗚咽を漏らし、されるがまま轟の胸に顔を埋めた
轟の体温を直に感じる
その優しい手付きが更に私の涙を誘った

手が私の背中に回る
更に匂いが体付きが感じる

私は恐る恐る轟の背中に手を回した

「とど…ろき…」

名前を呼ぶと更に力が強くなる
轟は何も言わず私を強く、優しく包み込んでくれている

＿結局私は下校時間のギリギリまで轟に泣きついていてしまっていた

＿＿＿＿轟焦凍side

いつの間にか磁力は俺の腕の中に居た
肩を震わせて泣く彼女を見るのが辛かった

だけど理由はそれだけじゃないんだと思う

泡瀬を見つけて嬉しそうに笑う彼女の笑顔にいつの間にか俺は惹かれていた
俺は磁力の笑顔が好きだ

…否、彼女の全てが好きなんだ

だからこんな彼女を泣かせる泡瀬が許せなく思った

本当は緑谷が「磁力さんの泡瀬くんを見る目がなんか違うよね」って言ってた時から磁力の泡瀬への気持ちは気付いていた
だけど俺はわざと磁力の前で泡瀬が八百万の事を好きだって事を匂わせた

そうすれば俺の事を見てくれるんじゃないかって
そう思った。

でも結果…悲しそうな表情をさせてしまった
悲しそうな表情も可愛いと思うけれど1番は笑顔が似合っている

だから…磁力には心の底から笑って欲しい

俺は磁力が泡瀬の事を忘れて目いっぱい笑う姿を見てみたいんだ。