大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ33)

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＿轟side
時刻はもう少しで7時になろうとしている
秒針だけが響く部屋で畳に横たわり何をする気にもなれなかった

＿優しくしてくれる焦凍が嫌だ＿

ドア越しで聞こえにくかったけどハッキリと耳に残ったその言葉

俺の存在がAを苦しめているって気付けた瞬間だった
気付けたのなら良かったんじゃないか
Aをこれ以上苦しめなくてすむから

なのになんで…こんなに辛いんだ

「A…」

名前を呼んで手を伸ばしてみてもその手は何も掴まず空を切った
当たり前だがそれがなぜだか虚しい

本当、おかしくなっちまったんだと思う

Aと出会ってから笑う回数が増えて
初めて女に、いや人間に「可愛い」「綺麗」だと思った

それと同時に俺は狂っていった

Aが愛おしくて嘘をついて
Aを自分の手の中に入れたかったから泣かせて

Aを無理やり抱き締めて弱い心の中に漬け込んで

Aは俺の事だけを考えていればいいんだって
本気でそう思った

悲しく電気も着いていない天井を見上げて目をつぶる
このまま眠って…全て忘れ去りたい

「轟くんっ！！」

突如として耳に入ってきた声に目線だけ動かした

「緑谷…と麗日…耳郎？」

何でコイツらがこんな所に…
緑谷ならまだ分かるが麗日と耳郎なんて何も関連がない…いや、待てよ

A…
麗日と耳郎はAと仲がいい
緑谷と麗日は仲がいい

「少し話したい事があるんだけどいいかな」

昨日、聞いたのはこの紛れもないハスキーボイス
Aと一緒にいたのは耳郎で間違いなさそうだ

俺は渋々立ち上がり電気をつける
薄暗かった部屋が一気に明るくなり少し目が眩んだ

「話してぇ事ってなんだよ」

思わずぶっきらぼうに対応してしまう
だが3人はそんな事も気にとめず俺の前へと移動してきた

「轟…あんたって相当バカなんだね」

「…は？」

まるで上鳴をバカにする時みたいないい方
俺は何かしたのだろうか
この間の小テストの結果が相当悪かったのか
いや…アレはAと勉強した所だ…満点とは言えないけどそこそこにいい点数を取れているはずだ

「Aの事好きなんでしょ
迎えに行ってやれよ」

耳郎は親指でドアの外を指した

「A、泣きそうだった
「私が悪い」「あんな事言った私のせいだ」って」

「……っ！？違うっ！！Aは…！」

思わず声を荒らげて否定する

「それ、言う相手違うんじゃないのかな」

緑谷の優しい声が耳に届いた瞬間、俺は走り出した

自分の気持ちを伝えるために。