大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ32)

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『…おっそ』

少し不貞腐れたような耳郎ちゃんの声
「ごめん！僕がちょっと手こずっちゃって」
隣のデクくんが申し訳なさそうに頭を下げた

「デクくん、電話やけん見えとらんよ」

そう突っ込むとハッとして顔を赤くした
デクくんって轟くんとおるけんかな？天然な所あるよね

『まぁいいよ
こっちも無理難題頼んだ自覚はあったから
ごめんね、緑谷、麗日
ありがとう』

「気にしないで！私もAちゃんの事心配だったから」

ほ、と耳郎ちゃんが息を着いたのが電話から聞こえた

「それで…轟くんの事なんだけど
轟くんは磁力さんの事を好きだよ」
『…え？じゃあなんで』
「磁力さん、好きな人がいたんだって
それで失恋したって」

その話は初耳だった
耳郎ちゃんが息を飲むのがはっきりと分かる

「耳郎さん、君なら分かってるんじゃない？
轟くんは昨日の話を聞いていた…って所かな？」

『昨日…もしかして…そっか
ウチのせいでもあるね、それ』
「それはないよ
多分轟くんは意味を履き違えてるんじゃないかな？」

耳郎ちゃんとデクくんの会話に混ざれずただ、会話を記憶しようと耳を傾ける

『…了解、ありがとね
じゃあAの所に戻るよ。今度二人になんか奢るよ』

そこで電話が切れた

「麗日さんごめんね？知らない話ばっかりしちゃって」
「ううん、いいよ
Aちゃん、失恋したのか…あんな美人な子を…相手の子も勿体ないことしたなぁ」

相手の彼女や好きな人を知らないんだから一概には言えないけれどAちゃんは本当に可愛いし綺麗な子だ
轟くんが好きだって言うのもよく分かるぐらい

「それでね、磁力さんは優しく接してくれる轟くんの事を失恋相手と重ねてみてる
私は最低だって言ってる所を轟くんが聞いちゃったんだって
「優しくしてくれる焦凍が嫌だ」って」
「…で、轟くんはAは俺の事が嫌いなのか？！って？」
「うん「Aが自分のせいで苦しむのを見るのが辛いから逃げ出した」って言ってた」

逃げ出すっていうのはそういうことか

「轟くんって優しいね
だって本当に好きな相手にわざと嫌われるような事私だったら出来ないな」
「…うん、そうだね」

デクくんは少し考え込むようにして、口を開いた

「きっと、それほど磁力さんの事が好きなんだろうね」
「そうやね…あの二人は何とかして結ばれて欲しいね」
「うん」

最初は重ねてたって私はいいと思う
きっと「轟くんらしさ」が見えてくる時が来るから

その時になったら恋愛相談、して欲しいな