大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ4)

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「轟！本当に来てくれたのか？！」
次の日の中庭で泡瀬は嬉しそうに轟に手を振った
「来いって言ったのはお前だろ…？」
一方轟は「言われた事をやった」だけなので不思議そうに首を傾げた

「それもそっか」
泡瀬は明るく笑って頭をかいた

轟は話を切り出すべく泡瀬に向き合った

「なぁ、なんで俺なんだ？
ほぼ初対面の俺なんかより信頼出来る磁力とかに言った方が良かったんじゃねぇのか？」

泡瀬は轟の言葉に核心を突かれたようで「うっ」と声を漏らした

「いやぁ…Aは絶対役に立たないし
あいつに恋愛相談するだけ無駄だと判断したからで」

｢それを言うなら俺の方が役に立たないぞ｣と轟は小さく呟いた

「…アイツ多分俺が八百万の事好きだって知ったら絶対はやしたてて面倒だし
それにA演技とか下手だから絶対バレる」

そうなのか、と轟は少し不思議に思った
女子達と関わる事が少ない轟ではあったがA組の女子は何かあれば恋愛に結び付けたいと言っているような印象だったがその中でも磁力だけは恋愛話には興味がなさそうな印象があった

恋愛より馬鹿やっている方が自分にはあっている
本人がそう言っていたのも耳にした事がある
確かに、とその時俺は大きく納得してしまった

「まっ、まぁAの話はいいだろ？
とりあえず八百万に聞いて欲しい事とか全部言うから…」

その後轟は半ば強引に連絡先を交換させられたり惚気話や恋に落ちた瞬間などを日が暮れる前まで聞かされた。
轟が寮に帰るとすぐさま緑谷や飯田、それに上鳴などA組の男子数人に「げっそりしてる」と心配されるほど、その恋愛相談は轟にとって過酷なものであった

轟が皆より少し遅めに風呂に入り男湯から出ると偶然女湯から一人飛び出してきた
「お」と思わず声を出すと相手も「うわっ」と驚いたような声を出した

「轟？！ごめん見てなかった！」

それは磁力だった
「こっちこそ悪い」
磁力は髪から水を滴らせ自身の服に染み込ませている

「髪乾かさねぇと風邪ひくぞ」

絶対にタオルで拭いていないであろう水の量に流石の轟も心配になり自分のタオルを磁力に投げる
「タオル忘れたのか？ちゃんと拭け」
乱暴に磁力の頭を拭くと「わぁ」と控えめな声が聞こえた

「轟大丈夫だよ」

その声色に轟は何故だか違和感を感じた
「それより百の所に行かなくちゃ
タオル私が洗濯しとくね。ありがと」

「あっ、おい？！」

磁力は轟の声も聞かず走っていった
轟は1人、この謎の違和感に首を傾げるのであった