大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ25)

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焦凍side
「…おせぇ」

俺は壁にかけてある時計を見て思わず呟いた
Aが今日は来なかった
何かあったのだろうか…怪我か？病気か

遅れてくるという可能性はある
今までも十数分経ってから来る、というのが多かったから
でもさすがに遅すぎるんじゃないか

一気に不安に駆られ、いても立っても居られず立ち上がり女子棟を目指して部屋を飛び出した

磁力、と表札がある部屋のドアの前に経つ
何故か緊張してきた

俺は一呼吸置いてドアをノックしようと手を握りしめた

「私は…優しい焦凍と洋雪を重ねて接してる｣

紛れもないAの声が聞こえた

俺と、泡瀬を重ねてる…？

「ただの最低野郎なんだよ…」

Aが最低？そんな訳ない
そんなハズない

Aは…俺が勝手に近づいていっているのを優しく、笑顔で迎えてくれているだけじゃないか

「もう、分かんない
嫌だ…こんな最低なのに優しくしてくれる焦凍が…
恋愛なんてもうしたくない…
こんなに辛いなら人を好きになる事なんてしたくなかった…！！」

…やっぱり、Aは俺の事が嫌いなのか？

嫌だって言う事はそういう事だよな
…あぁ、ごめんな

俺は優しいAに重荷を背負わせていた
俺は男だから
失恋したお前に不用意に近付いたら行けなかったんだ

ごめんな

A、俺が悪いんだ
だからそう自分を責めないでくれ

お前は優しいから
俺が気持ちを汲み取れないような奴だから

お前は、Aは……

フラフラとした足取りで1階へ降りる

「と、轟くん？大丈夫？体調でも…」

緑谷がフラフラな俺を心配したのかすぐに駆け寄ってくれた

「緑谷…もう、俺ダメだ…生きていけねぇ」

俺より数cm低い緑谷の顔が訝しげな表情を浮かべたのがハッキリとわかった

「Aに嫌われたんだ
Aは優しいから……俺が悪いのにアイツは自分のせいにして…
俺はAに全部背負わせちまってた手もう合わせる顔がねぇ」

緑谷の顔が「は？」と歪んだのが分かった
緑谷にとっちゃそんな事だろうが俺にとっては人生に関わる重要問題なのだ

「…うん、そういう事ね
ごめん話が突飛すぎててついていけてなかった
心配なら僕が磁力さん轟くんの事どう思ってるか聞いてこようか？
麗日さんとかにも協力してもらって」

「違ぇそういう事じゃねぇんだよ
聞いちまったんだ…あの声でハッキリ言うのを」

今にも泣き出しそうな目を抑え、また口を開く

「俺はもう…Aと一緒に居られる資格とか無いんだ…！」