大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ22)

今日:28 hit、昨日:0 hit、合計:55,555 hit

021 ページ22

その日の夕方
私は轟の部屋をノックした
しばらくして轟の声が聞こえドアを開けた

実は最近、勉強を教えに貰いに轟の部屋へと言っている
「今日はどこが分からないんだ？」
「数学のここと今日の化学！」
持ってきていた勉強道具を小さな机の上に広げた
そして畳の上に座る

轟も隣に座る
その間僅か20cm
少し動けば肩と肩がぶつかる
付き合っていない女子のこんな近くに行ける轟の距離感はどうなっているんだ

気にしてない体を装いながら今日の課題を解いていく

「あ、とろろき…轟」
「え？なんて？」

思いっきり噛んだ
とろろきってなんだとろろか
わからない所聞こうと思ってただけなのに

見れば轟の肩が震えていた

「とろろって何だよ…」

声も若干震えていた
その顔を覗き込む

大きい目は細められ口角をめいっぱい上げて控えめな笑い声
轟が笑っている
あの轟が

「はははっ…！」
「ねぇ！そんな笑わないでよ…！少し噛んだだけでしょ」
「で、でも…おもしれぇ…ふふ」

どこがそんなに面白いんだろう
轟の笑いのツボはどうやらおかしな所にあるらしい

「轟ってそんなに言いづらいのか？」

一頻り笑ったあと轟は目を擦りながら言った
声のトーンはいつもより若干高かった気がした

「言いづらいっちゃ言いづらいかな
噛みやすいってだけだけど」
「そうか？俺、小さい頃は轟って言えなくて苦戦した」
「あー小さい子には厳しいかもね」

幼い轟を想像しては少しニヤける
絶対可愛い

「…焦凍、って言うのはどうだ？」

轟は少し微笑んだ

「轟より焦凍の方が呼びやすくないか」

…これは「焦凍と呼んでいいぞ」って言う事なのか

「そうかもね」

でも国宝級イケメンを呼び捨てにするのは若干気が引ける
だがこのキラキラとした目を無視する事は出来ない

今度から呼ぼう、と課題を解き進める

「…？呼んでくれねぇのか」

まるで子犬の様な表情を浮かべ首を傾げる轟の姿に良心が痛む

「…し、焦凍」

小さい声で呟く

「なんて？聞こえないな」

轟は意地悪な笑みをうかべた

「ぅ…焦凍」

耳に口を近付けてハッキリと言ってやった
轟の顔が赤くなっていく

「焦凍も呼んでいいよ」

何で君がそんな顔をするの
焦凍は嬉しそうに目を見開いた

「A！」

照れもせず轟は言う

「俺女子の名前呼び捨てにしたの初めてだ」
「…そうなんだ」

私は洋雪が居た
…ダメだまた考えてた

「焦凍、ありがとね」

今は…焦凍の事だけを考えていればいいんだ