大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ3)

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「なぁ轟って八百万と席隣なんだろ？」

辺りも紅く染まってきた中庭で轟焦凍は隣のクラスの男子に声をかけられた
「…？そうだが」
確か同じクラスの磁力Aの幼馴染の泡瀬洋雪だ
轟は話しているのをよく見かけていた

「実はさ」

そう言って泡瀬は口を噤んだ
続きを促すようにじっと見つめると泡瀬の顔がだんだん紅くなっていく
熱でもあるのか
疑問を口に出す前に泡瀬が口を開いた

「俺、八百万の事が好きみてぇで…轟に相談乗ってもらいたくって」

顔を今の空のように赤く染め泡瀬は言った
「頼む…言いふらしそうになくて八百万とちょうどいい関係な奴がお前しかいないんだ…ほとんど初対面だし意味わかんねぇとは思うけどよ…」
必死に両手を合わせ懇願してくる

轟は小さく気付かれないようにため息をついた
＿恋愛相談なんて俺には到底力になれないような事だ

「頼む！お前しか居ない！それに恋愛相談とかじゃなくて八百万に好きな食べ物とか聞いてくる…そう、スパイ！スパイみたいな役割でいいからっ！！」

泡瀬との距離が一気に近くなり轟は思わず仰け反った
轟は少々考えこみ重たい口を開いた
「…別にいいよ。断る理由もないし」
そう言うと泡瀬の顔がパァッと晴れた

「ありがとなっ！！本当に…！！じゃあ明日のこの時間、またここに来てくれねぇか？！」

普段、こんなに威勢のいいような人と絡む事の無い轟は少し困惑しながらも「おう」と頷いた
「じゃあ本当にありがとうっ！じゃあまたなっ！」

それだけ言って走って去っていく泡瀬の後ろ姿に小さく手を振ってまた轟はため息をついた
厄介事に巻き込まれそうだ、と

少し飲み物を買って帰ろうとしただけなのにこんなにも労力を使うとは…

赤い自動販売機に小銭を入れ小さい容器に入った水を買おうとボタンを押す

ガコン、という聞き馴染みのある音と共に落ちてきた冷えたペットボトルを手に取りキャップを回し水を喉に流し込む

そこでふと廊下を見た

そこには同じクラスの磁力と先程まで話題に出ていた八百万が何やら話していた
八百万の方は嬉しそうに笑っているが磁力は少し浮かない顔だった
たが八百万はそれに全く気付いていない様子で磁力の1歩前を歩いていた

轟はそんな光景に少し首を傾げながらもキャップを締め中庭から出ようと足を踏み出した

「…あ」

確か磁力と泡瀬は幼馴染だった筈だ
八百万と磁力は仲がいい

俺に聞かず磁力に聞けばいいのに

轟はまた溜息を零した