大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ16)

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「緑谷おはよ」
「おは…？！おはよ！」

いつもに増して挙動不審な緑谷に軽く首を傾げながら洗面所へと重い足を動かした

鏡を見てその疑問は解決した
鏡の中の磁力Aはとんでもなく酷いやつれた顔をしていたからだ
目はいつもより小さく見えるし目の下にはくっきりと隈が出来ている
それにいつもより寝ていない筈なのに寝癖は酷い

こんな顔をいくら可愛いとは言えど男子に見せつけてしまったのだ
あの可愛い緑谷に
一気に申し訳なさと羞恥心がわき起こる

「磁力、おはよう」

ここ数日で一気に聞きなれた低く凛とした落ち着いた声が聞こえた
轟にもこの顔を見せるのはダメだと慌てて顔を覆い隠す

「緑谷からやつれてたって聞いたけど大丈夫か？」

そっと轟の手が私の手に重ねられた
きっと顔を見ようとしていたのだろう
緑谷、なんで話しちゃうんだ
君は全部轟に言っちゃうよな

「だめ…今凄いブスだし変だから」

必死に抵抗するが男子、しかも轟の力には勝てず手が顔から離れてしまった
「寝れてねぇのか」
「…うん
あんま見ないで…ブスだし」
元々ブスな顔が更にブスになってしまっている
それをイケメンに見られた
もう地に埋まってしまいたい

「…？どこが不細工なんだ？
確かにやつれた顔してるけど不細工では無いぞ」

「え、？」
轟の顔を恐る恐る見てみると首を僅かに傾げていた
私と目が合うと優しく微笑んだ

「夜更かしはダメだぞ
今日は戦闘訓練もあるし…とにかく何か眠れない事情があるなら俺じゃなくてもいい
誰かに相談しろ」

少し怒ったように轟はため息をついた
そして俯いて小さく呟いた
「お前が倒れたら…俺…」

「…え？ごめん何…」
「何でもねぇ。とにかく倒れたら元も子もねぇんだからな、分かったか磁力」

はぐらかされた
だけど轟の言う事はごもっともだ
私は深く頷いた

そうすると轟は満足したように笑う
「自分の体は大切にしろよ」
特に健康はな、と轟は私の頭を軽く撫でた

また、撫でてもらった

呆然とする私を他所に顔を洗ってさっさと行ってしまった

…轟に触られた部分が熱い
なんで轟は私にこんなに優しくするんだろう

轟は優しい
そして天然だ
きっと誰にでもこういう事をしちゃうんだろう
それで勘違いする女子も少なくないんだろう

轟は優しいから
轟は天然だから
轟は鈍感だから

きっと、自分の優しさが私を辛くしてるなんて気付いていない

ほら、今日もまた
洋雪と轟を比べて、重ねてる。