大嫌いな君へ送る嘘【轟焦凍】 (ページ12)

今日:27 hit、昨日:0 hit、合計:55,554 hit

011 ページ12

「八百万が泡瀬と付き合い始めたぁぁ！！？」

突如、教室前の廊下に上鳴の大声が響き渡った
「うるせぇよ！」
瀬呂が上鳴の頭を叩いたのが教室の中から見えた
「アホだろアイツ…」
誰にも聞かれないように小さく呟いた

上鳴の絶叫が響き渡る一瞬前まで2人が付き合い始めた事を知っていたのは轟と私しかいなかった
その轟の方をちら、と盗み見ると緑谷と飯田が焦っている横で涼しい顔をしていた

「えっマジ？！A知ってた？！？」

隣にいた響香があまり驚かない私の肩を掴み揺らす
「知ってた」
親友と幼馴染だからね、と少し苦笑を浮かべると響香は「ずるい」と言って少し頬をふくらませた

「今日はお祝いだなっ！八百万！」

左隣で固まっている百に切島が眩しい笑顔で呼びかけた
「砂藤にケーキ作ってもらおうぜ」
「あんた食べたいだけでしょ」
楽しそうな上鳴に響香が呆れ顔で突っ込む

「どうせなら洋雪もよぼ！いいよね、皆、百！」

また、作り笑顔を浮かべる

「……えぇ、皆さんありがとうございます」

百は心底嬉しそうに微笑んだ
辺りはケーキだ、とかパーティだとか、いつの間にか現れていた物間と拳藤ちゃんとか鉄哲と声とか
…洋雪の声とかで溢れかえる
百と一緒にいじられている洋雪は幸せそうだった
それを見るのが堪らなく辛くて目を背けた

「磁力」

小さいけど確かに耳に届く声
その声の持ち主は私の側にきて洋雪が見えない位置に立った
「轟…？」
「…パーティ楽しみだな」
こっちに視線を向けず緑谷に話しかけるように言った轟の背中は大きくて、私の視界は轟で埋め尽くされて…凄く安心した

「ありがと」

小さい声で轟の背中にお礼を告げた

轟が一瞬、こっちを向いて笑ったように見えた。