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｢おはよう、焦凍くん｣
｢おはよ、A｣
何の変哲もない朝、髪の毛をしっかりと整えてから部屋を出てきた私と少し寝癖の着いている焦凍くん
｢焦凍くんここ寝癖酷いよ｣
そういうと焦凍くんが屈んだ
おそるおそる寝癖を直すように撫でると嬉しそうに焦凍くんは目を細めた
愛おしくなってついでに他の所もわしゃわしゃと撫でてみる
｢お……もっと酷くなったんじゃねぇか？｣
｢大丈夫大丈夫！焦凍くんの髪だもん｣
｢意味わかんねぇ｣
｢あはは！｣
少し不服そうな焦凍くんの髪を最後にもう一度優しく撫でて綺麗に整えた
そしてばちっ、と目が合うと昨日のことを思い出してしまった
昨日私はなんてことを聞いてしまったんだ
そしてなんで焦凍くんはあんな風に応えたんだ
途端に顔が熱くなるのを感じてパッと焦凍くんから手を離す
｢あ、そうだ。今週か来週いつか暇な時あるか？｣
｢ん〜？今週の土曜暇だよ｣
｢分かった、開けといてくれ
……顔合わせ、その日にしてもらう｣
｢！？｣
顔合わせというと、例の婚約者と…？と固まった私に焦凍くんは続けた
｢こんな急いでわりぃ。早めに終わらせてぇんだ｣
｢あ、うん！そうだよね、｣
嫌なことなんだから長続きしたいと思うわけが無い
｢分かった、あけとくね｣
｢本当にありがとうな、A
今度絶対なんかお礼する｣
「…うん、楽しみにしてる」
今度の土曜日で、私の偽彼女期間は終わるのだろうか
まだ少ししか経っていないからあまりの急展開に正直頭がこんがらがっている
それにクラスメイトにあんなふうに言ってしまった手前別れづらい…でもそれで焦凍くんが平穏な日々を取り戻せるのならそれでいい
私は偽彼女なんだから、元々ただの友達なんだかや、深追いなんかしちゃダメだ
土曜が過ぎれば、私達はもう友達なんだ
それなのに何故、少し寂しいだなんて思うんだろうか
｢なぁA｣
｢…！どうしたの、焦凍くん｣
｢今日も部屋来るか？｣
｢え…？｣
｢明日は俺もお前もインターンで会えねぇだろ？
キツくなければでいいけど…｣
土曜まで時間が無い
それまでに、少しでも恋人らしくならなくちゃ
｢うん、焦凍くんさえよければいかせてもらおうかな｣
｢ありがとな、A
じゃあまた放課後｣
｢はーい！｣
私が焦凍くんに抱く感情は、恋なんかじゃない
少しドキドキしたけれど、少し愛おしいと思ったけれど…
……そう思いこませないと、本心に気付いてしまった事が辛くて心が潰れてしまいそうだった
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作者名：月亜 | 作成日時：2022年10月30日 20時
