君は彼女だけど彼女じゃない【轟焦凍】 (ページ13)

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｢おまえほんと…ズリィぞ、そういう所｣
｢え｣

焦凍くんの顔が赤くなっている
まるで、照れているかのように
……いや、実際照れているのであろう
それが何故なのか
それに気づけぬほど私は鈍感で天然な女の子ではないのだ
けれど、失礼を承知の上で宣うが焦凍くんにそんな感情があったことが意外で仕方がなく、素っ頓狂な声を出してしまった

｢……焦凍くん、こんなこと言われなれてるでしょ？｣

焦凍くんは紛れもなく私の発言に照れていたのだ
この部屋は空調も聞いていてちょうどいい温度であり、焦凍くんの”個性”柄急に体温が上がるなんてこともありえない
熱があるということも考えられないわけではないが今の一瞬でここまで赤くなる熱なんて聞いたこともないし、焦凍くんの発言からしてそれは間違いないだろう

｢んな事ねぇよ……それに、他人から言われんのと彼女から言われんのは重みがちげぇだろ｣

目を逸らしがちに、焦凍くんはそう言った

｢そっ……か…そういうものなんだね、彼女って｣
｢おう｣
｢彼女…………｣

焦凍くんの照れ顔に、頭の回転が遅れてしまった
今焦凍くんが重大で大変なことを言ったのにも関わらず
暫く彼女という言葉を脳内で反芻したあとやっとの思いで口を開いた

｢…………私…焦凍くんの偽彼女だよね？｣
｢あぁ。でも彼女は彼女だろ｣

私の困惑を他所に焦凍くんはピシャリと言い放つ

｢……に、偽ってなんだっけ……｣
｢何言ってんだ？｣
｢そのまんまの意味ですけど……｣

マイペースな焦凍くんはそこまで言ってまたノートにシャーペンを走らせる

｢え、あ、え……えぇ〜…？？｣
｢A、どうしたんださっきから｣
｢それはこっちのセリフだよ焦凍くん！？｣

あまりにも白々しいというか、本気でわかっていないというような表情で焦凍くんは言う
先程赤く染まっていた顔は大分戻ったが、まだ耳がほんのりと赤かった

｢偽なのに、そんなこと言っちゃっていいの？｣

そんな彼に向かって、念押しするようにまた言うと、焦凍くんはこちらをちらりと見上げた

｢だから、彼女は彼女だろって｣
｢でも偽でしょ、｣
｢…これ言い争ったら長くなるぞ｣
｢そうだけど…でも…｣

うじうじする私に向かって彼は言う

｢Aは、偽でも俺の恋人になったこと後悔してるか？｣

私の気持ちを窺うような、けれど真っ直ぐと凛とした瞳で彼は言う
こんなこと言う時じゃないのは分かってるけどそのあまりにも綺麗な顔に、息がつまりそうだった。