君は彼女だけど彼女じゃない【轟焦凍】 (ページ12)

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｢轟｣と書かれた部屋の前
緊張からか手が震える
でも、ドアの前で突っ立っている訳には行かない
意を決してコンコン、とドアを叩いた
開いたドアの先には焦凍くんが立っている

｢わざわざ来てもらって悪ぃな｣
｢う、ううん！全然大丈夫だよ！寮内だし！｣
｢ありがとな。入ってくれ｣
｢おじゃましま〜す｣

入る前から漂っていた畳特有のいい匂いが更に鼻腔をくすぐる
焦凍くんは真ん中に置かれた座卓の前にちょいちょいと私を手招きして座らせた
そこに焦凍くんの勉強道具が散らばっていたから私も同じようにノートと問題集を取り出して座る
焦凍くんは少し隙間を開けて私の隣に座った

｢じゃあ今日の課題やるか｣
｢うん！……あ、どこだっけ｣
｢P57の問3から問5までだ｣
｢ありがと〜……うわ、私ここ苦手なとこ……｣
｢あぁ……俺一応問3は解けたから教えようか？｣
｢えっ、いいの！？ぜひ！たすかる！｣
｢えーと…｣

ぐい、と焦凍くんが身を乗り出して私のノートを覗き込む
ふわりと優しい洗剤の香りと畳の匂いがより一層強くなる

｢ここはこの公式を使って……｣

焦凍くんのしっかりと節のある指が教科書をなぞり、低く綺麗な声がツラツラと言葉を紡ぐ
ハラりと落ちるその紅白色の髪はとても柔らかそうに窓から入る日光を浴びて輝いた
焦凍くんってこんな感じだったっけ？
あれ？おかしいな？前からイケメンだとは思ってたし、なんなら雄英で一番カッコイイと思ってた
……なのになんで、今は前よりもかっこよく見えるんだろう
キス発言で私がドキマギしているからそう見えちゃうんだろうか

｢……A？どうした？｣
｢…………ハッ！？｣
｢難しかったか？｣
｢え、あ、いや……｣

せっかく教えて貰っていたのに私は何を……！？と頭を抱える
そして弁明せねばと慌てて口を開いた

｢ご、ごめん！その……焦凍くんが、綺麗でかっこよくて……思わず見とれちゃった……
前から思ってたんだけどこうして至近距離で見ると尚更だな〜……って！｣

ひとしきり喋ってまたハッとする
これはただの変態なのでは……！？
見ると焦凍くんは少し俯きがちになってしまっていた
これは確実に引かれた。最悪だ

｢ご、ごめん！違うの！変態みたいなこと言ってごめん！！……し、焦凍くん……引いた……？｣

おそるおそる焦凍くんの顔を見ようと下から覗き込む

｢…………｣
｢しょーとくん……？｣

焦凍くんがこっちを勢いよく見るように顔を上げる
その顔は、ほんのり赤く染まっていた。