君は彼女だけど彼女じゃない【轟焦凍】 (ページ9)

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今日もいつも通り同じ階の三奈と遭遇して、いつも通りエレベーターを下りる

｢おはよ、A｣

いつもと違う事が一つだけ
優しげな顔をした焦凍くんが私の名前を呼んだことだ

｢……おはよう、焦凍くん｣

それにどきどきしながらも笑って返す
隣の三奈が｢わ〜！？｣と声を上げて期待に満ちた目でこちらを見たのが分かる

｢2人ってやっぱそうなんだ〜！！｣
｢そう？｣
｢付き合ってるの？ってこと！｣

ぴょんぴょん飛び跳ねる三奈を見てあぁ、と焦凍くんが一言

｢俺とAは付き合ってる｣

そう言いながら焦凍くんは私の肩をぐいっと引き寄せた
それに身を任せながらも顔が熱くなるのを感じる
焦凍くんの左側にいるからってだけじゃなくて、体の内側から熱くなる感じ
……距離感近め、とか絶対無理だ。慣れるわけがない

｢うわ〜！！！
おめでとうA！轟〜！！！ねーうちらのクラス最初のカップルだよ！？！｣
｢お、ほんとだな｣
｢早速皆に言ってこなきゃ！｣
｢え！？三奈！？｣

そう言って三奈は目にも留まらぬ早さでリビングの方にかけて行き、数秒後歓声が上がる

｢おめでとう轟ー！！！｣
｢轟くん、ほんとにおめでとう……！｣

切島や上鳴、緑谷が飛び出してきてにこにことする

｢Aちゃんー！！｣

後ろから女子たちに突撃されてもみくちゃにされた
それが数分ほど続いただろうか

｢君たち！何をしているんだい！？HRに遅刻してしまうぞ！｣

まさに鶴の一声
我らがクラス委員長飯田の声で確かに、と相澤先生の怒った顔を思い出したのか皆そそくさと散り出した

｢……とは言ったものの轟くん、 Aくん
君たちの関係は俺も少しびっくりしているが祝福したい気持ちもある｣
｢飯田…｣
｢だけれども、HRに遅れてしまっては行けないからな、手短ですまないが…おめでとう！
友人として心から祝福しているぞ｣
｢ありがとな、飯田｣

親友と称するまでの仲のいい友人のにこやかな笑顔を見てつられて笑顔になっていた飯田がコホン、と咳をしてキリッとした表情に変えた

｢ただし、これのせいで勉学の方が疎かになったり、不純異性交友と見なされる行為をした場合俺は委員長として黙ってはいられない
……そこだけはわかって欲しい｣

真剣な飯田を見て、轟も私も深く頷いた

｢大丈夫だ、飯田
……きっとお前が思うようなことにはなんねぇから｣

だって｢偽｣だから
とでも言いたげな焦凍くんの表情を見て、何故か少しだけズキりと胸が痛くなった気がした。