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｢どうかした？｣
｢……元彼、いたのか？｣
｢え、うん。一応？
まぁどっちも振られたんだけど｣
あはは、と笑えば轟もそうか、と言ってくれると思っていた
けれど轟は難しい顔のまま私を見つめていた
｢え、なになに？｣
｢……まぁ、そうだよな｣
｢いやほんとになに？｣
1人納得するように頷く轟にちょっと待てと遮りを入れる
｢…………なんか、元彼の話されるの面白くねぇなって｣
｢え？｣
｢いや、なんでもねぇ。忘れてくれ｣
忘れられなんて出来ない
だって、そんなの……本当に、恋人みたいな会話だった
元彼の話をされて不満を持つ今の彼氏みたいな…
いや、今の彼氏であることは間違いないんだけれどやっぱり偽だしそんな恋愛感情なんてそんなに無いだろうし
｢で、距離感と名前ってどういうことだ？｣
無理やり軌道修正するように轟が声を上げる
｢……あっ、あ、うん
その付き合ってた頃、下の名前呼び捨てで呼びあってたからそうすれば少しはそう見えるのかな？って
距離感は少女漫画とかドラマとか見てて付き合ってる人達って距離感近いじゃん
だから……そうすれば見えるのかな？って｣
心臓は未だバクバクしてるし、頭の中は上手く整理出来ていない
けれど轟が平然と話を続けるからそれについて行こうと必死で口を回す
｢A、ってことか｣
｢……！うん、｣
｢A｣
｢……な、なぁに、しょーと……くん、｣
轟のカッコイイ低めの声で私の名前が紡がれる
少しだけドキマギしてしまう
｢ふふ、くん付もいいな｣
控えめに笑う彼の笑い声にまたもや心臓が全力疾走した後みたいな速さで鼓動した
｢うぅ……ずっと轟って呼んでたからショートって言うの慣れないかも……ヒーロー名ならいけるけど｣
｢慣れるまでは焦凍くんでいい、
いつか呼び捨てで呼んでくれたら嬉しいけどな｣
｢……う、うん、？｣
偽彼女なのに？と一瞬思ったけれど、轟はきっと彼女に下の名前で呼んで欲しいタイプなんだろう
なら早く慣れなきゃな……と決意する
｢しょーと、……う〜…やっぱヒーロー名っぽくなっちゃう｣
｢焦凍くんも珍しいから嬉しいぞ
Aのペースで大丈夫だ｣
｢なんで轟はそんな早く呼ぶのなれてるの！？｣
｢？そうか？｣
轟は首を傾げて言う
｢慣れてねぇぞ？今だって心臓がうるせぇ｣
そんな素振り、見せてもないくせに
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作者名：月亜 | 作成日時：2022年10月30日 20時
