5*私の知らない世界 ページ8
気づけば、ここに来てから1年が経とうとしていた。
相変わらず、自分の部屋にいる時以外はずっとピンガや誰かに付き添われる生活を送っていた。
それ以外は、学校にいるか、組織に指示されたことをピンガに教わる…その繰り返しだった。
「いや、違う。そこにはこっちのコードを入れろ」
「…これ?」
「ああ、そうすればセキュリティを掻い潜って一番手っ取り早くデータを盗める」
「分かった」
パソコンに向き合う私…のすぐそばに立ってテーブルに片手をつき、パソコンの画面を指差しながらデータや数字の扱い方を教えてくれて。
段々疲れから集中力も途切れてきて、ふとピンガを見ると、思いの外真剣な顔で画面を見つめていて、初めて見るその横顔に不覚にも見惚れてしまった。
「人の顔ジロジロ見てんじゃねぇ」
「意外と綺麗な顔してるよね、ピンガって」
「……」
思っていたことがつい口から零れ落ちてしまい。
体を揺らすと、ずっと見ていた画面から目を離し、何とも言い難いような怪訝そうな顔で見てきた。
「そんなこと考える暇があんなら、プログラミングの一つや二つ覚えろ」
「だって私もう疲れちゃった。
学校から帰ってきてすぐ任務こなして…
…もう頭働かな〜い」
「……たく…仕方ねぇ野郎だな。
……飲みモン持ってきてやるから、座って待ってろ」
「わ、やったー!」
案外あっさりと休憩時間に入り、飛び上がるほど嬉しかった。
こんな面白くもないパソコン作業をずっとやり続けるなんて、正直退屈で仕方がない。
ありがとうと伝えると、またぶっきらぼうに頭をわしゃわしゃとされ、部屋から出て行った。
・
何を話すわけでもなく座ってジュースを飲んでいると、"なあ"と急に話しかけられた。
少し離れた椅子に座っているピンガに目を向けると、笑っている様子もなくて、少し緊張した。
「お前、4人家族だったのか」
「え、…うん、そうだけど…」
「弟も視覚や聴覚が良かったか」
「う、うん…耳は私の方が良かったと思うけど、目で見たものを覚えるのは、私の何倍もすごかったよ」
「弟の名前は?」
「…
「……」
たまに見せる、鋭くて殺気だった
…その顔を見ると、いつも何も言えなくなる。
「悪かったな、色々聞いて」
またいつもの調子に戻ったけど、なぜか…私の知らない世界…ピンガにしか分からない世界があるような気がしてならなかった。
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柚葉(プロフ) - ルビーさん» 私もそう言っていただけてすごく嬉しいです!! (11月27日 19時) (レス) id: 932d9e052b (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - ありがとうございます!嬉しすぎますっ (11月26日 22時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - ルビーさん» ルビー様。こんばんは!ご返信が遅くなりすみません…!( ; ; )ひとまず友達のみ公開を外しましたので、見れる状態かと思います…!一旦はこの状態でいこうかと思います! (11月25日 22時) (レス) id: 932d9e052b (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - 何回もごめんなさい!続編の方ログイン限定と出て見れないので何とかしてくれたら幸いです。しつこくてすみません (11月23日 21時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - ありがとうございます…!どうしても見たくて、、、笑 (11月23日 20時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年9月17日 22時