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「ぅわ、!」
曲がり角の所でドンと誰かとぶつかり、よろけかけたところで腰に手が回った。
「悪い」
顔を上げると、目の前に立っていたのは紛れもなくピンガで。
何やら息を切らし、急いでいる様子だった。
「どこか行くの?」
てっきり私の部屋にいるとばかり思っていたけれど…
「どこって…何かあったんじゃねーのか」
その言葉で、"あ"とピンときた。
どこにいるのか聞いたメッセージだけで、私に何かあったと察知して私の部屋から出てきてくれたのだと。
無意識なのだろうけど素でこういう行動を取るから、その度に私のそばにいてくれるのは"見張りだから"以外の理由があるのではないかと期待してしまう。
腰に回っていた腕が離れ背中をポンとされたので、横並びになって一緒に歩き出す。
「あのね、さっき不思議な人がいて…
背が高くて、帽子被ってて…そうだ!銀色の髪の毛で…、っ」
「…銀髪?」
ちょうど部屋のドアノブに手をかけたところで、ピンガはピクッと動きを止めた。
「……ジンか」
「ジン…?」
初めて聞く名前で。
"コードネームがある人なんだね"…そう聞こうとしたところで、"早く入れ"と強制的に部屋の中に入らされた。
「……思ったより引き延ばせなかったか」
「…え?なんて?
っ、ちょっとピンガ…!」
自分だけさっさと中に入っていくから、急いで靴を脱いでその背中を追いかける。
「…ピンガ?」
その背中がいつもより殺気立っていて、顔は見えないけど、きっと深刻な
「さっきのは…Aが見たそいつは"ジン"だ」
「……」
振り向いたその顔は、久しぶりに見る、ふと見せることのあるとても真剣な顔だった。
「A。暫く一人で出歩くのはナシだ」
「…え?」
「絶対だ。…いいな」
「……」
静かな気迫に気圧され、急なその発言にも"うん"と頷くしかなくて。
私が素直に言うことを聞く姿勢を見せたからか、そばまで来て満足そうにまた頭をわしゃわしゃとされた。
"髪が乱れちゃうからやめてよ"…何故かいつもみたいにそう返せなかった。
「俺はやることがあるから今日は部屋に戻る。
Aもさっさと寝ろよ」
「うん……おやすみ」
そうして、"おやすみ"と笑って部屋を出て行った。
「(…ねえ、教えてよ)」
…あなたがずっと別の何かを見ていることなんて、私はもうとっくの昔から気づいてるんだよ。
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柚葉(プロフ) - ルビーさん» 私もそう言っていただけてすごく嬉しいです!! (11月27日 19時) (レス) id: 932d9e052b (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - ありがとうございます!嬉しすぎますっ (11月26日 22時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - ルビーさん» ルビー様。こんばんは!ご返信が遅くなりすみません…!( ; ; )ひとまず友達のみ公開を外しましたので、見れる状態かと思います…!一旦はこの状態でいこうかと思います! (11月25日 22時) (レス) id: 932d9e052b (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - 何回もごめんなさい!続編の方ログイン限定と出て見れないので何とかしてくれたら幸いです。しつこくてすみません (11月23日 21時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - ありがとうございます…!どうしても見たくて、、、笑 (11月23日 20時) (レス) id: 400667dae2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年9月17日 22時