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「あ゙っ。」

大口の呪霊が、醜い声を上げた。その瞬間、虎杖君は焦って野薔薇の方を見た。

「兄者ァアア゙ア゙アッ!!」

大口の呪霊が野薔薇を飲み込もうと口を開け、頭から喰らいつこうとしていた。けれど野薔薇はそれに振り返ることもせずに言った。

「まだこっちは見せてなかったわね。」

野薔薇はパチンと指を鳴らした。

その音と同時に、男の呪霊の首元に一本の線が入ったのを、また二人は気づけなかった。

『簪』

釘に刺された大口の呪霊は体の中のものを噴出させ、水音を立てながら地面に倒れ伏した。

「心配しなくても、すぐに兄貴も送ってやるわ。」

大口の呪霊は最後にそれを聞いて、息絶えた。

「血塗…….。」

男の呪霊は自分の兄弟の死に様を見て、呆然とそう呟いた。それと同時に同時に男の喉元に赤い線が滲み出した。その首がもう繋がってはいないことを、私と男だけが知っている。

全てを悟ったのだろう男の呪霊は、その黒い目から涙をこぼした。それは目の淵から溢れ出し、まっすぐ頰を伝っていった。

それを見た虎杖君の足取りが遅くなったのを最後に見て、私は目を閉じた。

ブオンッとエンジン音を吹かせながら、軽トラがトンネルを抜け私たちがいる方向へと突っ込んだ。野薔薇と虎杖くんはなんとかそれを避けたけれど、男の呪霊は動かなかった。

ゴシャッと、硬くて水気のあるものが潰れる音が辺り一帯に響いた。その音から少し遅れて、ゴトンと硬くて重いものが地面に転がる音も聞こえた。

軽トラの運転席からは悲鳴が上がっていた。

「嘘だろっ!!」

血に染まったフロントガラスを前に、車内にいた男二人組は縮み上がった。

人を轢いてしまったと震える声で叫ぶ男たちの後ろで、野薔薇と虎杖くんは呆然と立っていた。

ふと、私の足に何かが当たった。下を見下ろせば、それはあの男の頭だった。目元に涙の跡がまだ残るボーリング玉くらいあるそれの首は綺麗に切断されていた。

「......。」

私はそれを蹴り飛ばした。

中に浮いた頭はゴン、と一度バウンドして、道路からはみ出しガードレールの向こう、崖の下へと落ちていった。

そして私は最後に頭をゆるく振った。

ピシャッと私の周りに赤い曲線が描かれる。それは言うまでもなくあの男の血で出来た線で、地面に飛び散るとヂヂッと微かに音を立てた。

私は自分の髪を一房を手に取った。長い髪の先がすこし溶けていた。

ああ、早くシャワーを浴びたい。

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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時

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