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その瞬間、私の方へとやってきていた野薔薇が男の人の頭をトンカチで殴った。
ゴンっと鈍い音と共に男の人が姿勢を崩す。
「じゃあなんでんな格好してんだよ。」
変な匂いはそれか、と野薔薇が呟きながら言った。
「ムレるんだよ。」
男の人は、額に青筋を立てながら怒りの形相でそう言った。
『触燗腐術 極ノ番 「翅王」』
その瞬間、男の人の背中から、血でできた蝶の羽のようなものが浮かび上がった。
「バチ、殺、し!!」
男の人は太い声でそう言い放った。
男の人の背中に生えた血の羽。その血が地面の石に滴ると、石がジュウっと音を立てて腐った。
それを見て、野薔薇と虎杖君は瞬時に危険性を把握したようだった。
「!!釘崎!!小松!!あの血さわんなよ!!」
「分からいでか!!」
野薔薇がそう返事をするが、私は苦笑いをするしかない。
「ご、めん。触っちゃ、った。」
「はぁ!?」
野薔薇は私の手を見て、絶句した。
「それより、に、げるよ。」
私は血が触れていない方の手で野薔薇を引っ張った。ちょうど男の人が私たちの方に羽を広げるのが見えたからだ。
「走りなさい。背を向けて。」
私、野薔薇、虎杖くんが一斉に走り出す。それと同時に、男の人の血がミサイルのように私たちの後を追った。
先頭は虎杖君、次に私が続くが、野薔薇が少し遅れていた。
「釘崎!!もっとスピード出せるか!?」
虎杖君が野薔薇に声をかけるが、野薔薇は「無!!理!!」と声をあげることしかできない。ちょうどその時、野薔薇の髪の先に男の人の血が触れそうになっていた。
私はとっさに右手を伸ばし、野薔薇の頭を守った。
ジュウッと私の手の甲の肉が音を立てて腐る。
「A!!」
野薔薇が悲鳴をあげた。
「だい、じょうぶ。」
どちらにせよこっちの手はもう半分腐っていた。それよりも今は野薔薇だ、と私は野薔薇の背中を強く押した。
野薔薇の体が私の力によって押し出され、前に出る。その野薔薇を虎杖くんがキャッチし、抱きかかえた。
「いくぞ!」
虎杖君の言葉に私はうなずき、全力で地面を蹴った。
少し前を走る虎杖君が凄まじい勢いで土埃をあげながら走っていく。私はその後ろに追いつけるように、ポーン、ポーンと等間隔で地面を蹴り浮くように走った。
川辺を抜け、森を駆け抜け、そして道路の方へと出る。その瞬間、血の追撃が止まった。
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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時