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「……なら、せめて炭酸飲料とかにしてくれません?生暖かい液体物とか変に生臭い肉とか、苦手なんですよ。」

「あ、もしかして味も感じない?」

意外、こいつわかんねーんだ、といった感じの真人の声に私は眉を潜めた。呪いのくせに私こそ変な生き物みたいに扱いやがって。失礼な。

「風味くらいは分かりますよ。鼻は機能してるし。」

だから尚更食べ物の匂いだけが感じ取れて不快なんだけれども。特にハンバーグとかラーメンとか、いわゆるご飯物は温度の関係もあるのか匂いばかりが強い上生暖かいから気持ち悪くて苦手だ。

その点、炭酸飲料はいつだって冷たいし、シュワシュワと口の中に泡が広がる感触も楽しいし、鼻につく嫌な匂いもしない。だからお気に入りなのだ。

そう言った意図を察してか真人は「炭酸飲料かー。でも栄養はなさそうだしなー。」と独り言を呟いた。

「ま、君の意見には納得したよ。次はAでも気に入りそうな栄養があるものを選んでくるよ。」

真人はそう言って食べ物が載せられていたんだろうトレイを床の上に置き避けた。

結局こいつを頼っているところがあるのが心底嫌だ。早くここから出なければ。そんなことを考えていると私の頰をさらっと真人の髪が撫でた。

「それじゃあ、これは前払いね。」

ちゅ、とリップ音が響いた。

唇に感触を感じた瞬間、私は息を止めた。

「ふふ、それじゃーまたね。A。」

「死ね。」

私は後ろ手に縛られた手で中指を立て、真人に向けそう言ったが、返事が返ってくることはなかった。

「……はぁ。」

静かになった部屋で息を吐く。結局、こいつらの目的はいまいちわからない。真人にいたっては、思考回路も何もかもが理解できない。私に恋をしただのほざいて……本の読みすぎで人間の真似事でもしたくなったんだろうか。いずれにしたって、人でなしの私をその対象にするのは間違っている。

「私には、愛がなにかなんてわからないのに。」

そしてきっと今後一生わかることはないのだろう。探るたびに途切れ途切れになっている私の記憶を見返しながら、私はそう思った。

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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時

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