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夜、私と野薔薇、虎杖君は伏黒君の後を追って八十八橋の下までやってきていた。
伏黒君の後をこっそりつけていく、けれど伏黒君は結局ここに来るまで私たちの存在に気付いていないようだった。
「自分の話をしなさ過ぎ。」
「だな。」
野薔薇と虎杖君が口々にそう言いながら、伏黒君に声をかけた。伏黒君は顔をしかめながら私たちを見た。
「ここまで気づかないとはマジでテンパってるのね。」
野薔薇がそう言った。
「別になんでも話してくれとは言わねぇけどさ、せめて頼れよ。友達だろ。」
伏黒君に向かって、私も言った。
「みんな、弱くはない、よ?」
それでも私たちを巻き込みたくなかったんだろう。伏黒君は優しいんだなー。
伏黒君は少しの間何もないところを見つめてから、呟いた。
「津美紀は寝たきりだ。この八十八橋の呪いは被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上いつ呪い殺されるか分からない。だから、今すぐ祓いたい。」
伏黒君は「でも任務の危険度が釣り上がったのは本当だ。」と言葉を続けようとした。けれどそれを野薔薇と虎杖君は遮った。
「はいはい、もうわかったわよ。」
「はじめっからそう言えよ。」
そんな二人の言葉に、伏黒君が笑ったのを私は見た。
ようやくいつもの4人に戻った私たちは八十八橋の下を歩いていた。少し歩くと私たちは川を見つけた。
川や境界を跨ぐ行為は、彼岸へわたる行為と同じで呪術的に大きな意味を持つ。
私たちが川を跨いだ瞬間、目の前の景色は異界の洞窟の中のような禍々しい世界に様変わりした。
「でたな。」
「祓い甲斐がありそうね。」
虎杖くんと野薔薇がそれぞれ戦闘の準備をしながらそう言った。私も二人に合わせ、頭にさしている簪を一本引き抜いた。
「あ゙?」
その時、突然私たちの耳に届いた声。そして背後から感じるおぞましい呪いの気配に、私たちは固まった。
「なんだぁ?先客かぁ?」
不気味な声で呪霊はそう言った。その呪霊は目から血を流す顔の下に、大きな口を持つ異形だった。しかも、ちゃんとした言葉を話している。
呪霊としての格が高いんだ。
「伏黒、コイツ別件だよな。」
虎杖君の言葉に伏黒君は「あぁ。」と答えた。
「じゃあオマエらはそっち集中しろ。」
虎杖君は手を構えながら言った。
「コイツは俺が祓う。」
「なんだぁ?遊んでくれんのかぁ?」
呪霊は面白そうに口元を歪め笑った。
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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時