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「夏、油?」

聞いたことのない名前だ。そいつがこの男の上に立っているのだろうか。それとも協力関係なだけ?

なんにせよ、こいつがあの化け物を高専まで送りつけてきたやつに違いないと私は頭から簪を抜いた。

「釘崎野薔薇はどこ。」

「?誰それ。」

「茶髪の女の子。ここに、きているはず。」

「知らない。」

呪霊はあっさりとそう言った。あまりの緊張感のなさに嘘をついているのではと疑うが、今のところこの人からは悪意も何も感じない。本当に知らないと見ていい。

「知らないなら、いい。」

私は簪を両手に持ち、構えた。

「自分で探しに行くから。」

そう言うと同時に、私は地面を強く蹴った。

まずは一発、簪を相手に振るう。しかしこれを呪霊は何もせずに避けた。続け様に地面を蹴り、二発目三発目を当てに行く。それも躱された時、男の蹴りが私の脇腹に食い込んだ。

「っ!!」

衝撃でそのまま吹き飛んだ私が柱に叩きつけられる。背中全体に衝撃が走り、私は口から血を吐き出した。

「嘘でしょ。」

男は本当に驚いたようにそう声を上げた。

「弱過ぎ。話にならない。」

そいつは表情に明らかに落胆の色を浮かばせた。

「夏油はお前なんかのどこがいいと思ったんだろう。」

疑問形でありながら、そいつは私に聞いてなんかいなかった。私は立ち上がりもう一度地面をけった。

簪を振る、振る、振る。その全てが相手に当たることなく躱される。私なんかの速度じゃ当たりもしない。私は頭に刺さっていた最後の簪を抜き、3本全ての簪を相手に投げつけた。

渾身の力で投げたそれはビュッと音を立てて風を切りながら相手に向かっていったが、男はそれを指で挟んでいともたやすく止めた。

「こんなので…。」

倒せるとでも思ってるの、とでも言おうとしたんだろう。

けれど次の瞬間、そいつの腕は切り落とされていた。

「は?」

地面に落ちた腕を見て男はそうこぼし、私を見た。その目には長いこの金の髪を浮かび上がらせた私が写っていることだろう。

髪を操り、私は今男の腕を切り落とした時髪に付着した血を落とした。

「やっぱり、ただの木製の簪なんかじゃ、役に立ちそうにない、かな。」

口元から垂れる血をそのままに、私は笑った。

「なら、ちゃんと自分の力で、戦わなくっちゃ、ね?」

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しょーどくえき - わ!すっごくおもしろいです!続きがとても楽しみです!頑張ってくださいね! (2021年6月20日 16時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます!この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました!更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます!スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります! (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい! (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柑橘 | 作成日時:2020年11月28日 17時

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