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遂に私は素直な彼女たちに諭されてしまうのだろうな、と思うと思わず苦笑を浮かべてしまう。今後直々に、ママに申し出よう。『お願いママ、私を捨てて!』なんて。もう、どうでもいいや。
「いいよ、あと…今朝はごめん。」
どうしても小さくなってしまう謝罪を聞いたエマは、一瞬訝しげな表情をしたが、「ああ、あれのこと?そんなのいいよ!私の方こそごめんね!」なんて言う。あなたが謝ることなんて、無いのに。むしろ私が土下座くらいしないといけないくらい、今まで散々あなた達の声を無視してきた。
「早く行こ!」
なんて清々しい声、なんて凛々しい表情なんだろう。私もこれだけ素直で、これだけ美しい顔なら。
部屋を出たら、途端に兄弟の驚く表情が目に飛び込んでくる。そしてまた、私を見て笑顔になる。
「Aだ!」
兄弟たちから出た声に、今度は私が驚く番だ。柔らかい笑みは、私が今まで生きてきた中でどの場面でも、見たことの無い顔だった。あっという間に私の周りに群がる自分の身長の半分ほどしかない彼らを見て、ツン、と鼻が痛くなる。泣かない、泣かない。そう決めたのに。
「ごめんね皆、Aは私たちと話があるの!」
「ほら。」
エマの差し出す手を、思わず握る。今日は今までで一番、私は素直だ。
ハウスを颯爽と駆け出したエマに、必死についていく。
兄弟の手を振る姿を見て、また目頭が熱くなる。なんて私は涙脆いんだ、笑ってしまう自分がいる。
ほとんど入ったことのない森を、エマは私に「そこ気をつけてね、木の根が出っ張ってるの!」「ここはあんまり見つからないんだよね、隠れんぼ」なんてケラケラ笑って解説を加えながら、私の歩くスピードに合わせてゆっくりと進んでくれる。
酷い。私が嫌でしょう、ずっと一緒に遊ばずに一人でいた私を誘ったのに突き放されて。無視されて。笑顔なんて見せもせずにすぐにご飯を食べ終わってすぐにお風呂に入ってすぐに寝る。嫌でしょう、嫌いでしょう。なのにそんなに優しくするなんて、辻褄が合わないわよ、おかしいわよ。孤独が心地いいなんて真っ赤な嘘よ。それに気が付かせるなんて、酷いじゃない。
森の落ち葉をじゃりじゃりと踏みながら歩く。緑の葉と葉の間から覗かせる太陽を眩しいと感じる。君は言葉を絶やさない。また泥に足を入れそうになって前につんのめる。
「後ちょっとだよ。」
そう言って君は笑う。
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蜜柑の樹(プロフ) - ヤシの実さん» ありがとうございます!ノーマンサイド…成程、またいつか書かせて頂きますね、ご意見ありがとうございます!凄く嬉しいです。是非今後とも応援よろしくお願いします! (2019年3月20日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシの実 - 初めまして!「作戦の行方〜」と「君の幸せを〜」が大好きです!!レイサイド切なかったです、、、ノーマンサイドもお時間があれば読んでみたいな〜と思ったり(笑) 勿論!他の作品もとても素敵でした^^* 更新楽しみに待ってます! (2019年3月19日 21時) (レス) id: ad6942667d (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - moca.sararenonさん» おわああああ!めっちゃ嬉しいです!更新…はい。頑張ります!(ちょっとテストだったもので…(言い訳)) (2019年3月2日 17時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
moca.sararenon(プロフ) - とっても面白いです!!!!更新頑張ってください!すごく読みやすくて、一気に読んでしまいましたああ!更新頑張ってください! (2019年3月1日 15時) (レス) id: 86f2d024d7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - 暁ーあかつきーさん» 早速ありがとうございます!ご期待に添えるよう頑張ります! (2019年2月5日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑の樹 | 作成日時:2018年8月8日 11時