ずっと、独りだと思ってたのに。 ｢」 ページ22
･
｢ふざけないで｣
そう言って突き放したその手を、静かに見つめる。今になって、後悔する。その手は確かに、微かに震えていた。彼女の優しさも全部分かっているのに。その優しさを、踏みにじったのは私の方なのだ。
私は家族と、あまり馴染めずにいた。ずっとこのハウスで過ごしてきたはずなのに、皆を好きなはずなのに。遠ざけているのがこの顔なのは知っている。なんとまあキツいこの顔。顔を洗ってくると言って鏡を見て落胆する。自分でも驚く程につり上がったこの眼は、近寄り難い印象を受けるのだろうな。
ポタポタと自分の顔から落ちていく新鮮な水を眺めて、今なら涙を流しても誰にもバレないのではないかと思った。でも、流さない。それは私には合ってない。一生を一匹狼のままここで暮らすんだ。誰にも必要とされないまま、愛されないまま、里親も見つからずに、淡々とテストをこなして淡々と生きてさっくりと死ぬんだ。
それが、自分の運命なんだと、この顔に、この性格に生まれてきたのは運命なんだと、割り切っている。割り切れている自分が嫌いだ。
本当は泣いていいのに、本当は悲しんでいいのに、私は私の中の硬いプライドを何故か壊せずにいる。感情を出すのは苦手で、そのリミッターを解除できる日はいつか来るのだろうか。
ママは私を愛してくれた。ママは私を受け入れてくれた。他の子と同じように、同じだけの愛情を注いでくれて。それが私の唯一の一息つける存在で。ママが居なければ私はさらに孤独を感じていたな、とそう思う。ママの笑顔が好き。ママの仕草が好き。愛してくれるママが私は大好きだ。
でもそれ以上に、家族の笑顔を見るのは好きだったし、家族の声を聞くのが好きだった。なのに。
｢いつ、道を、間違ったんだろうなぁ…っ｣
自由時間だというのに、家族と遊びもせず、ベッドに倒れ込む。そうでもしないと、自分は壊れてしまいそうで。動いたら手が冷たい感触を覚え、何事かと思うとシーツが濡れていた。慌てて頬を撫でれば、自分が泣いていることに気づく。ゆっくりと制服の袖で涙を拭い、その跡をまじまじと見つめる。
｢A、何してるの…？｣
そんな声に、動揺を隠せない。どうしようと思って振り向くと、首をつってしまう。痛いなと首を傾げ、怪訝な顔をして前を見据えると、エマがいた。今朝、あんな態度をとってしまったというのに現れる。
｢ねえ、ちょっと着いてきて！話したいことがあるの。｣
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「約束のネバーランド」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑の樹(プロフ) - ヤシの実さん» ありがとうございます！ノーマンサイド…成程、またいつか書かせて頂きますね、ご意見ありがとうございます！凄く嬉しいです。是非今後とも応援よろしくお願いします！ (2019年3月20日 22時) (
レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシの実 - 初めまして！「作戦の行方〜」と「君の幸せを〜」が大好きです！！レイサイド切なかったです、、、ノーマンサイドもお時間があれば読んでみたいな〜と思ったり(笑) 勿論！他の作品もとても素敵でした^^* 更新楽しみに待ってます！ (2019年3月19日 21時) (レス) id: ad6942667d (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - moca.sararenonさん» おわああああ！めっちゃ嬉しいです！更新…はい。頑張ります！(ちょっとテストだったもので…(言い訳)) (2019年3月2日 17時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
moca.sararenon(プロフ) - とっても面白いです！！！！更新頑張ってください！すごく読みやすくて、一気に読んでしまいましたああ！更新頑張ってください！ (2019年3月1日 15時) (レス) id: 86f2d024d7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - 暁ーあかつきーさん» 早速ありがとうございます！ご期待に添えるよう頑張ります！ (2019年2月5日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑の樹 | 作成日時：2018年8月8日 11時
