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「Aを探しにきたんだよ」
と声が聞こえたら、思考が遂にショートする。
無意識にAは椅子を引き、立っていた。
「挨拶も返してくれないし、
鬼ごっこも参加しないし、
レイとずっと話してるし、
髪だっておろしてるし、
いつも本なんか読まないくせして図書室来てさ。
正直今日僕、ずっとイライラしてたんだよね、恥ずかしながら。」
本当に恥ずかしそうにはにかむノーマンに、自分もこの現状に体全体が熱くなるのを感じる。
「二人で図書室行って、仲良く話してるんだなって思ったら急に頭にきた。
それで気付いたんだよ、
ああ僕、レイに嫉妬してたのかって。」
その言葉に、思わず口を隠してしまう。そうでもしないと、にやけてしまうのがバレそうだったから。その行動でさえも挙動不審になりかけて、ノーマンに思惑がバレてしまっているだろうと考えるだけの脳は残っていたらしい。
「やっぱりそうだったのか。
僕としちゃ、まんまと作戦にはまったみたいで悔しかったけど、
君が好きだって、気付いたんだよ。」
「A、僕はAが好きだよ。」
ここまで言わせておいて、自分が何も言わないのは流石に狡いか。
そう思ってほとんど泣きそうになるのを堪える。
「私も、ずっと貴方が好きです。ノーマン。」
満面の笑みでそう言えてしまう。
言わせる彼に凄いなと感心していると、
不意に前方から負荷がかかる。私は抱きしめられたのか、と分かるのに暫くかかってしまった。
それが嬉しくて嬉しくて、ぎゅっと腕をまわして抱きしめ返せば、幸せで胸がいっぱいになるようだった。
「お熱いこと。くっついた途端これかよ。」
という声に驚いて顔を上げると、そこにはレイが立っていた。
ドアが開いたことに気付かなかったことに気付いて、ノーマンも私も思わず吹き出してしまう。
「ありがとうレイ。」
そう言うと、レイは「おうよ。」と笑い、図書室を去っていった。
もう一度「大好きだよ。」と呟いてみれば、「僕もだよ。」と返ってくる。
しあわせを噛み締める、ということの意味がわかった気がした。
───これが新しい『当たり前』になればいいな、と願いながら。
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蜜柑の樹(プロフ) - ヤシの実さん» ありがとうございます!ノーマンサイド…成程、またいつか書かせて頂きますね、ご意見ありがとうございます!凄く嬉しいです。是非今後とも応援よろしくお願いします! (2019年3月20日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシの実 - 初めまして!「作戦の行方〜」と「君の幸せを〜」が大好きです!!レイサイド切なかったです、、、ノーマンサイドもお時間があれば読んでみたいな〜と思ったり(笑) 勿論!他の作品もとても素敵でした^^* 更新楽しみに待ってます! (2019年3月19日 21時) (レス) id: ad6942667d (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - moca.sararenonさん» おわああああ!めっちゃ嬉しいです!更新…はい。頑張ります!(ちょっとテストだったもので…(言い訳)) (2019年3月2日 17時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
moca.sararenon(プロフ) - とっても面白いです!!!!更新頑張ってください!すごく読みやすくて、一気に読んでしまいましたああ!更新頑張ってください! (2019年3月1日 15時) (レス) id: 86f2d024d7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑の樹(プロフ) - 暁ーあかつきーさん» 早速ありがとうございます!ご期待に添えるよう頑張ります! (2019年2月5日 22時) (レス) id: ece34a1d58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑の樹 | 作成日時:2018年8月8日 11時