宮侑はツンデレ克服中【宮侑】

33 ページ33

.









『別れよう』







悪い勘は当たった


治に別れを告げられた









『だってAさ...』









｢えっ...？｣




何かを言いかけて治は目の前でボロボロ泣き出した


突然泣き出す治に固まってしまう私

治が泣いているところなんて一度も見たことがなかった





｢...ごめん...｣




治はTシャツの裾で涙を拭いている

今にも声が出そうなくらいだった




｢なんで泣いとるん...？｣








『本当は別れたくないんやもん...』







｢じゃあなんで...？｣








『だってAに幸せになってもらいたいんや』









治は涙が溜まった目で私を見た





｢治といるのは幸せなんやで？別れるなんて言わんでよ！｣


私は思わず涙目になりながら治に抱きついた

でも治は私を離した








『侑のこと好きなんやろ？






Aは気づいてないだけや』







｢え...？｣


治は優しくそう言った




｢私は治が好きなんやで？侑じゃないで？｣









『俺の事は好きじゃなくてきっと憧れや』









｢え...？｣







『だってAいつも侑のこと見よるんだもん




部活でも教室でも、たとえAが意地悪されとってもAは侑といる時が一番笑顔で楽しそうやった





そんなのは付き合う前から分かっとった






本当はあの時付き合おうって言ったのは、振られてAのことちゃんと諦めよう思ったねん






でもAが俺にいいよって言うから





嬉しくて、本当はだめだって思ったけど、やっぱりAのこと大好きやったから止められんかった





付き合えばもしかしたら俺のこと好きになってくれるかもとか淡い期待もしたけれど





やっぱりそんな事はなくて





Aが見るのはいつも侑のほうで





そんな侑がだんだん憎くなってどんどん性格の悪くなっていく自分がいて




しまいにはAのことも困らせて






大好きなAを俺なんかで不幸にさせたくなかったねん





でも今回の喧嘩でちゃんと分かった





俺はやっぱり侑にはかなわないって』









『だからA、俺を振ってください』









.

34→←32

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す