３３話 ページ36
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「あの……Aちゃん。さっきなにかあったの……？」
脱衣所で服を脱いでいる時、仁花が遠慮しながら聞いてきた。
『……後で、清水先輩に話すとき、仁花にも話すから。』
そう言い、私は体にタオルを巻いて、風呂へと足を運んだ。
仁花と潔子さんを避けるような言い方をしてしまい、少し罪悪感が生まれた。
チャポン。と、体が湯船に浸かる。
タオルを巻きながらは浸かってはいけないので、少し恥ずかしい。
でも、今はそんな恥ずかしさよりも、恐怖心の方が強かった。
さっきの、体育館での私への視線。
それには紛れもない怒りも混ざっていたと思う。
植野は空き時間などに選手の中に仲のいい人を作っていたのであろう。
元々コミュニケーション能力高そうだもんね。羨ましい。
私から見て「二次元のキャラクター」も、結局のところは、「人間」で、彼らは「男子高校生」なのだ。
私だって、自分の一番仲がいい親友が泣かされたら怒るし、泣かせたやつの事を殴りたい。とまで思うだろう。
でもそれは精神年齢１２歳の私が思う事で、高校生の彼らは、殴ってはいけない事くらい分かっているのだと思う。
しかも私は女子だ。男子は母親とかに「女の子は殴ってはいけません」などと教育されてるであろう。
まあ私はその意見嫌いなんだけど……。
だから、手を出しちゃいけないから、怒りの視線を私に投げかけたのだ。
さっきの皆からの視線を思い出して、湯船に浸かっていて暖かいはずなのに、寒気がした。
気持ち悪い。
今の私の心境を表す言葉は多分これがしっくりくるだろう。
「……Aちゃん？顔色悪いよ？」
そう声を掛けられて、ハッとする。
いつの間にか仁花と潔子さんが両サイドに来ていたのだ。
周りを見渡してみると、いつの間にか皆いなくなっている。
そんなに考えすぎてたのか。と、自分でも驚く。
「ねえ、Aちゃん。さっきの事、話してくれる？」
そう訊いてくる潔子さんの声色は、冷たい気もしたが、どこか暖かくて、私は気が緩んで話し始めたのだった。
氷が解けていくように、私の体に暖かさが戻ってきたような気がした。
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作者名：柚子胡椒 | 作成日時：2018年12月6日 18時
