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「(…にしても、あっさりしてるねぇ…)」


"萩原くん、こちらこそありがとう。
おやすみなさい。"

昨日の夜、寝る前にAちゃんから送られてきた返信。
少なくとも、今まで出会ったどんな女の子よりもあっさりしていて、簡潔な子で。

抑えきれずに俺が言ってしまった"好き"という言葉も、"友達として"とかそういう意味だと思ってるんじゃないか。

スマホの画面を眺めながら、彼女のことだからあり得そうだなと思った。


「(……次、いつ会えるかな)」


…いっそのこと、会いに行こっかな。

うん、そうしよう。時間ができたら、Aちゃんにどこにいるのか聞いて、すぐに会いに行こう。
…でもなー、時間ができるまでが、ちと長いよなぁ。


「あー、偶然どこかでばったり会ったりしねぇかなぁ…
空からAちゃんが降ってこねぇかなぁ…」

「おめーはさっきから何をぶつぶつ言ってんだ」

「あたっ、」


陣平ちゃんにデコピンされ、ようやく飯を食うことに意識が戻った。



















今日は髪を下ろし、コテで少しウェーブをかけた。

お兄ちゃんの婚約者と一緒に出かける日だし、きちんとした格好を意識して。そんな中でも、お洒落も忘れず…ほんの少しの乙女心を、赤いグロスに込めて唇にのせた。


「(…よし、服のほつれもない…)」


鏡の前で一周し、ワンピースに変なところはないことを確認してから、バッグを肩にかけた。


「_____そろそろ行くぞー、A」

「は〜い!今行くー!」


…さ、今日も頑張ろう。
深呼吸をして、気合いを入れて部屋を出た。



















「え、萩原くん…?」

「Aちゃん…?」


本当に偶然出会えたと、良い年して胸が高鳴った。

教官に近くの公共施設を掃除して来いと言われ、5人で掃除を終えてから、野暮用で俺だけ少し遅れて歩いていた帰り道。

髪を下ろして少し巻き、ワンピースを着たAちゃんと本当にバッタリ出会った。
いつもと雰囲気が違うことに不覚にもドキドキし、赤く艶やかな唇に視線がいく。


「(………鬼塚ちゃん、マジでさんきゅー…)」


罰としてさせられた掃除だったにもかかわらず、棚からぼたもち。


「萩原くん…どうしてここに?」


目を丸くして驚いている所を見るだけで、"可愛い"なんて感情がとめどなく溢れてくる。


「教官に掃除を頼まれてね。ま、罰なんだけど…」

「…ふ、そうなんだ」


ふわっと笑った仕草に、また心を奪われた。

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年10月16日 0時

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