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Aちゃんのその言葉に、その場にいる全員が息を呑んだ。
聞き返された鬼塚教官も、戸惑っている様子で。

Aちゃんが真っ直ぐに教官を見る姿を見て、自分が彼女に惚れた理由が分かった気がした。


「…警察官だから命を張らなきゃいけないとか、そうじゃないからただ守られてれば良いとか…私はそうは思いません。

警察官の皆さんや、警察官を目指している皆さんは、助ける人を選んだりしませんよね?」

「そ、それは、まあ…そうだが、」

「私も同じです。自分が助ける側に回った時、自分の立場がどうだから…と、助けることに自分の立場を考慮した順序なんて考えません。

あの日、人質が警察官だとしても、私は同じことをしていました」


真っ直ぐな目と真っ直ぐな言葉に、ああ、ようやく分かったと思った。


「私たちを普段助けてくれる警察の方の命だって、守られるべき命です…私はそう思います」


君のそのただひたむきで真っ直ぐな所に、どうしようもなく惚れ込んでしまったのだと。
あの時、自分も手が震えるほど怖かっただろうに、その気持ちを抑え込んでまで人を助けようとする、優しさに…俺はどうしようもなく心を打たれたんだと。


「申し訳ない、確かに…今の言葉は不適切だった。
君の言うとおりだ。撤回させてもらっても良いか?」

「え、あ…す、すみません…!いち大学生が生意気なことを…」


途端にあわあわとし出したAちゃんが、どうしようもなく愛おしくて。


「おい萩…顔に思いっきり出てんぞ」

「へへ、まぁ隠す気ないからね」

「お前なぁ_____」


呆れ顔の陣平ちゃんの言葉が耳に入らなくなるほど、Aちゃんを見てしまう。

俺の視線に気付いたのか、ふとAちゃんがこっちを見た。
目を伏せて少しだけ微笑んだのを見て、胸がキュッと痛くなる。


「(ああ、こりゃ俺も重症だな…)」











送ってくれるという萩原くん、そして、今日名前を知った松田くん、伊達班長、降谷くん、諸伏くんの言葉に甘え、警視庁からの帰り道をみんなで一緒に歩いている。

大男に囲まれながら歩くのは、何だか連行されているみたいで。

そして、私の真横を歩いている萩原くんは、ずーっとニコニコと私のことを見てきて。


「あのー…萩原くん」

「ん?どうしたのAちゃん」

「そんなに穴が開くほど見られると、恥ずかしいんだけど…」


顔を上げてそう伝えると、萩原くんは少し顔を赤くして微笑んだ。

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作者名:柚葉 | 作成日時:2023年10月16日 0時

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