来世もまた恋をしよう。【萩原研二】 (ページ6)

今日:38 hit、昨日:49 hit、合計:15,783 hit

5ページページ6

人質事件から一週間後、警視庁に事情聴取のために署まで来るように言われた。あの日、また会おうと言ってきた萩原くんとは、全く会っていない。そりゃそうだ、連絡先なんて交換していないし…。

私もその時は急いでいたからあれからすぐに別れたけれど、確かに萩原くんはまた会えると確信したような顔をしていた。

「(…不思議な人だな、萩原くんって…)」

そんなことを考えながら、案内された部屋の前までやって来て、警察の方が扉をノックした。
中から"入れ"と聞こえて来たと同時に、案内の人が扉を開け、私も続いて中に入った。

「(っえ…？！)」

中を見渡すと、私を見てヒラヒラと手を振る萩原くんがいて。
あの時そばにいた他の4人と、彼らの上司？らしき人も座っている。

「Aさん、ご足労いただきありがとうございます。
どうぞおかけください」

「はい…」

周りの人の威圧感に気圧されながらも、萩原くんの向かい側に腰掛ける。

「やっほ、Aちゃん」

「や、やっほー、萩原くん」

「また会っちゃったね？」

「……」

語尾にハートマークがつきそうな言葉に、そして子犬のような嬉しそうな顔に、そうか、事情聴取で会えると踏んでいたのだとすぐに分かった。

「おい萩原、何をうつつを抜かしている！しゃんとしろ！」

「はは、さーせん」

ぺろっと舌を出した萩原くんに、上司と思われる人が"そんなんで警察官になれるのか！"と喝を入れた。

…まさか…警察学校の生徒…？

「それではAさん、早速ですが…一週間前の事件についてのお話を聞かせてください」

「分かりました」

それから、人質事件の日の大まかな流れを質問されありのまま話し、犯人に近づいて行ったことを萩原くん同様に警察の人にお叱りを受けた。

「子どもを助けてくださったのは、我々としても有難いことです。それでも、貴方も大切な都民なのです。

今後は、そのことを充分に自覚して下さい」

「…はい、すみませんでした」

素直に謝ると、萩原くんが安心させるように笑顔で頷いてくれて。その顔は、"もう無茶はしちゃだめだよ"と言っているようにも見えて。

「それにAさん。危険なことや怪我をしそうなことは、この警察官になることを目指しているコイツらが率先してやるべきなんですから」

「……」

強面の人のその言葉に、何故かモヤモヤして、ついには黙っていられなかった。

「それって、どういう意味ですか？」

・

6ページ→←4ページ